lovesexy
ブラックミュージック遍歴① ~初めての黒人音楽~
Lovesexy/Prince


1988年、当時はまだ中学生。洋楽齧りたてで何を聴いても新鮮に感じられた頃、ある日テレビから流れてきたPVに一瞬にして撃ち抜かれた。プリンスの「Alphabet St.」。カラフルな背景をバックに、ぐにゃぐにゃとカラダを捩じらす気持ち悪いダンスを披露するプリンスを見て、ひどい衝撃と興奮を覚えてしまった。すぐさまその曲が入ったこの『Lovesexy』を購入、多感な中坊には、このジャケットを持ってレジに向かうのは相当ハードルが高かったが、そのとき何とかオトナへの壁を乗り越え、結果、今に至るまでブラックミュージックに取り憑かれることとなってしまった。
何しろ、これが初めて濃厚に接することとなった黒人ミュージシャンの音楽。それまでは、久保田利伸とかジョージ・マイケルとかロビー・ネヴィル(恥っ)なんかのアルバムを好きで聴いていたので、今にして思えば、その後の嗜好が垣間見えなくもないなぁ、と。他には、キャメオ「Word Up」、ランDMC「Walk This Way」、ロジャー「I Want To Be Your Man」、テレンス・トレント・ダービー「Wishing Well」あたりはリアルタイムで好きだった曲で、ラジオでエアチェックして、カセットテープに録音して何度も繰り返し聴いていたが、あくまで当時のヒット曲として捉えていて、特に黒人音楽というのを意識して聴いていたわけでなかったように思う。
で、このアルバム。一部には、プリンスはここからダメになったという評価もあるようだけれど、個人的な思い入れもあって、殿下の創造性が爆発した最後の鬼傑作だと思っている。次の『Batman』も良作で好きなんだけど、そちらでは天才の凄味よりも余裕の方が目立っている。
いろんな意味で統一感アリ過ぎなトータル・アルバムゆえ、曲単位であれこれ語るのは不粋な気がするが、アルバム全体は「Alphabet St.」のPV同様に非常に色彩豊かな音像で、風変わりだが完璧なアレンジを聴かせる。精神と官能が同時に絶頂に達したような、神々しさとエロの極み。酒池肉林を音で表現するとこうなる、と言うような、まさにファンキーポップ桃源郷。この『Lovesexy』との邂逅は、自分の音楽遍歴において、かなり大きな出来事だったなぁとやはり思う。この時点ではまだブラックミュージックに対して無自覚だったが、この後、殿下のディスコグラフィを遡って聴いて行き、次第に自分の音楽の嗜好をはっきりと自覚するようになっていった。