fire

70年代10大ファンクバンド⑤

Fire/Ohio Players


数多くのファンク・バンドを輩出したオハイオ州。この全米随一のファンク・シティ出身のバンドの中でも筆頭格と言えるのがオハイオ・プレイヤーズだ。60年代初頭からウィルソン・ピケットのサポートなどで活動し、その後ファンク・バンドとして独り立ち。70年代前半には、ファンカデリックと同じレーベル、ウェストバウンドに籍を置き、「Funky Worm」などのヒットを出した。
ウェストバウンド期は、後にPファンクに合流することになるウォルター・”ジュニー”・モリソンが音楽的なイニシアチヴを取り、奇妙に捩れたファンク・サウンド、SMをモチーフにしたアートワークは、非常にマニアックで一般ウケする要素は薄い。74年にバンドはウェストバウンドからメジャー・レーベル、マーキュリーに移籍、この時、ジュニーはウェストバウンドとソロ契約を交わして脱退、バンドはシュガーフット主導のもとメンバーを補充し再建を図った。マーキュリー移籍第1弾『Skin Tight』がヒットし、同年リリースした第2弾がこの『Fire』だ。
ウェストバウンド期の変態的な音楽性と比べると、マーキュリー移籍後はグッと洗練され、よりダイナミックなサウンドで格段にスケール・アップ。ねっとり黒く濃厚なファンク・サウンドを展開している。シュガーフットの野卑で猥雑なギターとヴォーカルはファンクそのもので、特にスライからの影響もありそうな鼻にかかった独特のヴォーカルは、ファンク・ヴォーカルのひとつのスタイルを定義し、キャメオのラリー・ブラックモンなどにも影響を与えたと思う。ジュニーと入れ替わりで加入したキーボードのビリー・ベックは、ファンキーなクラヴィネットからジャジーなピアノまで幅広いプレイをこなす才人で、糖蜜のような甘いファルセット・ヴォーカルも含め、新生オハイオのキーマンとも言える存在だ。ジャケットのコンセプトはSMからコスプレ、シチュエーション・プレイに移行し、健全な成年男性なら誰でも楽しめるものになった(?)。アルバム『Fire』は全米チャート1位、シングル「Fire」も全米チャートを制す大ヒット。この74年の時点で、オハイオ・プレイヤーズはクール&ザ・ギャングからNo.1ファンク・バンドの称号を奪取し、その栄華は『Mothership Connection』を引っ提げたパーラメントにその座を追われるまで続いた。
アルバムに収録されたファンク・チューンはどれもヘヴィーで濃密。タイトル曲「Fire」は、地響きするリズム隊、猛火を煽るようなホーン・セクション、バリバリとすべてをなぎ倒すギター、何とも臭くイヤらしいヴォーカルが最高な傑作ファンク。ややポップに疾走する「Runnin' From The Devil」、黒く煙たいグルーヴが堪らないスロー・ファンク「Smoke」、地獄の業火に灼かれるようなヘヴィー・スロー・ファンク「What The Hell」など、凄絶なファンク・ナンバーがぎっしり。一方で、スウィートなバラードにも定評にある彼ら、「Together」はビリー・ベックのファルセットが冴えるドリーミー・スロウ。「It's All Over」はヴォーカル・グループ風のスウィート・ソウル。バランスよく硬軟織り混ぜたアルバム構成は抜かりない。