world is a ghetto

70年代10大ファンクバンド⑧
The World Is A Ghetto/War

プロデューサーのジェリー・ゴールドスタインを介して邂逅したアニマルズのエリック・バードンとLAの黒人バンド、ナイトシフト。バードンはこのバンドを気に入り、バンド名をウォーと改名させ、デンマーク出身の白人ハーピスト、リー・オスカーをメンバーに加え、自分のバック・バンドにしてしまった。エリック・バードン&ウォーとしてアルバム3枚をリリース、ヒット・シングルも出し順風満帆に見えたが、ツアー途中でバードンが急にヤル気をなくし、放り投げて遁走。しかたなくバンドだけでツアーを乗り切ったが、これで自信を付けたか、この事件以降、バードン抜きでアルバムを制作するようになる。
この72年作『The World Is A Ghetto』は、ウォー名義では3枚目のアルバム。これがまさかの大ヒットを記録、2曲のシングルはいずれも全米チャート・トップ10入り、アルバムもチャートを制し、更に翌73年の年間アルバム・チャート1位を記録。全盛期のスティーヴィー・ワンダーやアース・ウィンド&ファイアですら成し遂げていない大快挙だ。それにしても、何でこんなポップさの欠片もない、シリアスで重たいアルバムが売れまくったのか不思議だ。スライ『暴動』にしてもそうだが、まったく一般ウケしそうにないこういう作品が、おそらく黒人聴衆だけでなく白人層にまで広くアピールしヒットしたという事実には、アメリカってやっぱスゴい国だなぁって思ってしまう。
ポピュラリティとは無縁の硬派なアルバムだが、やはり名盤に違いない。歌詞で語られるメッセージは、ジャケットのイラストのような、LAのゲットーの日常を活写したドキュメントといった感じで、まるでNWAやアイス・キューブらのギャングスタ・ラップの先駆けのようだ(もうちょっと穏健な表現であるけれど)。路地裏の饐えた臭いは、そのサウンドにも濃厚に反映されている。ロックやジャズ、ラテン音楽とファンク、ソウルのハイブリット。予めきっちりアレンジを決めて録音されたのではなく、スタジオでのジャム・セッションを延々と繰り返し、徐々に練り上げられていったグルーヴィーな楽曲は、高度な演奏力あってのものだ。ゆったりとしたファンク・グルーヴのルーズさがカッコいい「The Cisco Kid」、アルバム中ではややポップなファンク「Where Was You At」の最初の2曲はまだ聴きやすい方で、この後はリスナーを突き放すような長尺曲が続く。リー・オスカーのハーモニカが郷愁を誘うカントリー・パートと、ジャジーなインプロヴィゼーションが交互に立ち現れる「City,Country,City」、初期ファンカデリック風のドロドロした「Four Cornered Room」あたりはかなり取っ付きにくい。タイトル曲「The World Is A Ghetto」はへヴィーでスローな名曲。