3+3

70年代10大ファンクバンド⑨
3+3/The Isley Brothers

59年のデビュー以来、今だ現役のロナルド・アイズレー率いる兄弟グループ、アイズレー・ブラザーズ。長いキャリアの中で、時代に合わせてスタイルを変化させてきたグループだが、その全盛期はファンク・バンドとしてヒットを飛ばした70年代だろう。特にこの73年作『3+3』は、そのタイトルに示されているとおり、ヴォーカルの長兄3人に、弟と従兄弟の楽器担当3人を加えた、計6人によるセルフ・コンテインド体制のスタートを高らかに宣言した記念碑的作品。
とは言え、この時点ではまだ完全に3+3オンリーというわけではなく、ドラムスとオルガンはサポート・メンバーで賄っている。ファンク・バンドでドラムスは外部委託というのは画竜点睛を欠くと思ったか、次のアルバムのタイトル曲「Live It Up」からはギターのアーニーがドラムスを兼任し、完全セルフ・コンテインドを実現した(兼任なのでステージではサポート・メンバーを起用しただろうけど)。また、バンド内の労働格差が激しく、コーラス担当の長兄2人の貢献度は他の4人に比べかなり低そうだが、ジャケットではデカい体でやたら目立っているのは年長ゆえの特権か(特に次兄のルドルフ)。労働実態に見合わない待遇に年少3人は嫌気が差したか、この辺りの問題が後の分裂劇の一因になったのかも。
この『3+3』は、ファンキーなグルーヴ、スウィートなソウル・ミュージック、ロッキッシュなギター・ソロ、ソウルフルで力強いヴォーカルが、見事なバランスで溶け合っている。実はファンク・アルバムとしては『Live It Up』や『The Heat Is On』の方が上だと思うが、一番よく聴くのはやはりこのアルバムだ。これほど苦味と甘みがいい塩梅なソウル・アルバムは他にない。アーニーのギターが唸るグルーヴィー・チューン「That Lady」は彼らの代表曲。ワム!がカバーしヤマタツにも影響を与えた「If You Were There」はポップでメロウな青春ソウル。朴訥としたオルガンの響きがいなたい「What It Comes Down To」、メロウ・バラード「Highway Of My Life」はロナルドのミックスド・ヴォイスが映える名曲。
この頃のアイズレーは、同時代の白人シンガー・ソングライターやロック・バンドの曲のカバーが恒例となっていたが、このアルバムでも4曲がカバー曲。ジェイムス・テイラーの「Don't Let Me Be Lonley Tonight」は、ロナルドの泣きのヴォーカルが胸に迫る傑作バラード。誰もが知ってる(オレでも知ってる)有名曲、ドゥービー・ブラザーズの「Listen To The Music」は、アイズレーがやるとこんなにもファンキーになる。ジョナサン・エドワーズという人の「Sunshine」は才人クリス・ジャスパーのギトギトしたクラヴィネットと、「Funky Worm」風のシンセ音がどギツい、アルバム中で最もファンキーな曲。原曲はまったく知らないが、おそらく原曲の跡形もなくアイズレー流に改変されているに違いない。シールズ&クロフツの「Summer Breeze」は、これも原曲を知らないのもあるが、もうこのアイズレー版が素晴らしすぎて、こちらの方が一般的には知られているのでは。物憂げな夏の終わりの空気、疾走するアーニーのギター・ソロとロナルドの哀愁帯びたヴォーカルが堪らない。