fresh
Fresh/Sly & The Family Stone
 Epic '73

エリコとグラハムが脱退し、新たにアンディー・ニューマーク(dr)とラスティ・アレン(b)が加入。リズム隊がごっそり入れ替わったカタチで制作されたのが6thアルバム『Fresh』。『暴動』の延長線上にあるサウンドだけれど、それよりは整理された印象。重く沈み込みウネリまくるグルーヴは恐ろしくカッコよく、『暴動』に匹敵するほどの傑作。
ベスト・トラックは1曲目の「In Time」。ドラムスとベースによるスリリングなリズムの交錯はいつ聴いても痺れる。特にドラムスのタメの効いたグルーヴと変則的なハイハットワークは他では聴けない類のモノ。この1曲だけでもスライの天才っぷりがひしひしと伝わってくる。もう1曲重要なのが「If You Want Me To Stay」。印象的なベースラインはあちこちで引用されているけれど、ここでのホーン・フレーズは後にブーツィーズ・ラバー・バンド「Under The Influence Of A Groove」を経て、Pファンクのいくつかのレコーディングで哀愁漂う歌メロとして流用されているお馴染みのフレーズへと引き継がれていく。
その他の曲も一様に素晴らしく、ダークなグルーヴの「Let Me Have It All」、ファンキー極まるスライの歌唱をリトル・シスターのコーラスが盛り立てるスロー・ファンク「Thankful N' Thoughtful」、ホーン・アレンジがカッコいい「Skin I'm In」、ゴリゴリのベースラインがトグロ巻く「I Don't Know(Satisfaction)」、バウンシーな「Keep On Dancin'」など、グルーヴ地獄にどっぷりハマる。原曲のイメージはまるで無い、「Que Sera,Sera(Whatever Will Be,Will Be)」のブルーなカバーも素晴らしい。
ところで、『Fresh』を初めて聴いたのは91年頃で、おそらく多くの人がそうだったように、例の別ミックス盤が初体験。何も知らずに数年後にオリジナルのアナログ盤を聴いた時は、あまりのショックにその後しばらくの間は『Fresh』を聴く気になれなかった。もちろん、オリジナルの方が断然素晴らしいのだけれど、当時魅了された別ミックス盤にもやはり愛着を感じる。