p-funk earth tour
Live P.Funk Earth Tour/Parliament
 Casablanca '77

多分50枚以上はあるだろうPファンク関係のアルバムの中でも、おそらく最高傑作、かな。個人的にも、Pファンクでどれが一番好きか訊かれたら(訊かれたことないけど)、ちょっと悩んだフリをしてこのアルバムを挙げるだろう。
とにかく、Pファンクのベスト・メンバーが揃っていた時期の、脂が乗り切って勢いに乗りまくっていた頃のライヴ音源。せっかくのライヴの流れを途中で挟まるスタジオ録音曲が遮っているとか、ベスト・メンバーとか言いながら実はブーツィーとエディがいないとか、ライヴ音源に後からスタジオで録った音をオーバーダブしてるらしいとか、「Maggot Brain」が入ってないとか、いろいろと突っ込みどころ満載なアルバムではあるけれど、それでもコレほど素晴らしいファンク・ライヴ盤は他に聴いたことがない。

この伝説的なステージに立っていたプレイヤーは、バーニー・ウォーレル(key)、ジェローム・ブレイリー(dr)、コーデル・”ブギー”・モッソン(b)、ゲイリー・シャイダー(g)、マイケル・ハンプトン(g)、グレン・ゴインズ(g)、ホーン・セクションの4人:フレッド・ウェズリー、メイシオ・パーカー、リチャード・”クッシュ”・グリフィス、リック・ガードナー。ヴォーカル陣はクリントン、グレン、ゲイリーを中心に、オリジナル・パーラメンツの4人:ファジー・ハスキンズ、レイ・デイヴィス、カルヴィン・サイモン、グレイディー・トーマスに、後にパーレットとなる2人:デヴィー・ライトとジーネット・ワシントン、以上総勢17人。加えて、アンプ裏のマイクで歌っていたという後のブライズの2人:リン・メイブリィとドーン・シルヴァに、ラバー・バンドのマッドボーンも特別にクレジットされている。ブーツィーとエディの名もクレジットされているけど、オーバーダブあるいはスタジオ録音曲での関与が定説のよう。

スタートは「P.Funk(Wants To Get Funked Up)」。ドックンドックンと脈打つジェロームのバスドラに導かれて、フレッドとメイシオがソロを取る。もうこれだけで真っ黒ディープなグルーヴのウネりに呑み込まれる。ツボを押さえたバーニーの鍵盤も冴える。それまで張りつめていた空気が、クリントンの”L.A. Sing!”の合図とともに聴衆も演者も会場ごと一気に爆発しブッ飛ばされる。

「Dr. Funkenstein's Groovalisticprosifunkstication Medley」は、「Let's Take It To The Stage」を軸に「Take Your Dead Ass Home!」のフレーズを交えながら、クリントンの黒い漫談が聴衆を煽る。
ジェロームのグルーヴィーなドラムが畳み掛ける「Do That Stuff」は、終盤のメイシオの畳み掛けるブロウに大興奮。ワサワサしたヴォーカル陣の絡みも素晴らしい。

スタジオ録音版ではバーニーのシンセが目立つ幾何学ファンクだった「Undisco Kidd」は、ここでは「I've Been Watching You」のムードにも似たクールでダークなファンクに深化。
ヴォーカル陣が迫力のユニゾンで燃え上がる「Children Of Productions」に続いて、いよいよアルバムのハイライト「Mothership Connection」~「Swing Down,Sweet Chariot」。ファンク史上屈指のディープ・シンガー、グレンがゴスペル丸出しで歌い込み、思い思いに絡むバック・ヴォーカルもグレンを盛り立てる。

15分に及ぶ長尺スロー・ファンク・ジャム「Dr.Funkenstein」は、サビを歌う聴衆の熱狂がヤバい。曲後半はメイシオ、フレッド、ハンプトン、バーニーが各々たっぷりとソロを回す。クリントンのJBばりの"Maceo, Blow! Blow!"という呼び掛けに、一緒に"Blow!"と叫ぶ聴衆(と一緒につい叫ぶ自分)、それに応えて入ってくる瞬間のメイシオの男前っぷりに痺れる。バーニーの宇宙を自由に飛び回るような想像力豊かなソロも素晴らしい。

この曲以降は、ジェロームとブギーのリズム隊を中心にゴリゴリのヘヴィ・ファンク連弾をカマし最後まで爆走する。「Gamin' On Ya」「Give Up The Funk」と、スタジオ録音版を凌ぐグルーヴィーな超重量級ファンク。いずれもフェイドアウトして曲が終わってるのが勿体無いが、この圧倒的な演奏力の前では大した問題じゃない。
ライヴの最後は「Night Of The Thumpasorus Peoples」。各プレイヤーがブチ切れんばかりの熱量でファンクを叩きつけ、轟音と共にショウは大団円を迎える。

ちなみにスタジオ録音曲ももちろん素晴らしい出来。「This Is The Way We Funk With You」は軽めのファンクだが、グルーヴはモノ凄い。噎せ返るよな暑苦しいジェロームの熱唱は素晴らしいとしか言いようがない。
アルバムのオーラスに収められた「Fantasy Is Reality」はまさかのレオン・ウェア作で、ライヴを聴き終えた後に、ちょっぴり切ないようなこの曲が流れてくると、祭りの後の余韻と寂しさにも似たしんみりとした気分になる。