pandemonium
Pandemonium/The Time
 Warner '90

プリンスの『Graffiti Bridge』は微妙な気分にさせる作品だった。当時あのアルバムを聴いて、それまで絶大な信頼を置いていたプリンスに、疑問を持ち始めるようになった。この『Pandemonium』は、84年の『Ice Cream Castle』を最後に解散したザ・タイムの、6年ぶりの再結成アルバムで、通算4作目。映画グラフィティ・ブリッジのためにかつてのメンバーを集め何とかアルバム・リリースにまで漕ぎ着けたものの、どうやらすぐに多忙なジャム&ルイスが脱退、バンドは再び解散となった。その後、2011年になってオリジナル・セヴンと名を変え21年ぶりに再々結成を果たしたが、この時もすぐにジェシー・ジョンソンがディアンジェロの復活欧州ツアーに参加するため脱退し、バンドは解散状態になっている模様。
この『Pandemonium』、彼らの最高傑作とされる82年の2nd『What Time Is It』、2011年の通算5作目『Condensate』と甲乙付け難い傑作で、当時『Graffiti Bridge』よりも気に入ってよく聴いていた。ザ・タイムは最初の3枚まではプリンスの傀儡バンドの性格が強く、曲づくりも演奏もほとんどプリンスがやっているという話もあるぐらいだが、『Pandemonium』ではメンバーの発言力がいくらか増したようではあるけれど、相変わらずプリンスは制作に大きく関与している様子。収録曲のうち、「Jerk Out」「Chocolate」「Data Bank」などは、80年代初期のプリンスの未発表曲を焼き直したもの。
タイトル曲「Pandemonium」は、復活を賑々しく祝うような、どんちゃん騒ぎのパーティー・ファンクで、否が応にも盛り上がる。「Jerk Out」はザ・タイムで唯一R&Bシングル・チャート1位となった曲で、「Controversy」タイプの傑作ファンク・ナンバー。終始垂れ流されるチャカチャカしたギターのカッティングが超ファンキーだが、これは「Controversy」で聴けるギターと酷似しているので、プリンスの演奏だろうか。何度か挟まるファンクでロックなギター・ソロがまたエラくカッコよく、これはジェシーだろう。そしてモーリス・デイおハコの掛け合いで更に盛り上がること必至。
「Blondie」「Skillet」はブラック・ロック・チューンで、こういうタイプの曲は以前のアルバムには無かったので、ジェシーの意志が強く反映された曲なのだろう。「Donald Trump(Black Version)」はねっとりとしたR&Bスロウで、このアルバムの流れではいいアクセントになっている。「Chocolate」も『Controversy』~『1999』の頃を彷彿とさせるドンパン・リズムのファンクで、やっぱりこういうのは好きだ。「My Summertime Thang」は、『Graffiti Bridge』収録の「The Latest Fashion」の別ヴァージョンだが、夏っぽい爽快感のあるこちらのヴァージョンの方がいい。