whats going on
What's Going On/Marvin Gaye
 Tamla '71

アメリカ黒人音楽史上最高のアルバム、という評価が定着している稀代の名盤。今更あれこれ語るべきこともないのだけれど、戦争や人種問題、環境問題や都市の貧困など、リリースから40年余り経った今なお解決されない諸問題を取り上げた詞作や、所属歌手にシングル・ヒットを至上命題として課すモータウンの徹底した管理体制に反旗を翻し、シンガー自らが制作を主導しミュージシャンをコントロールするインディペンデントな姿勢は、スティーヴィー・ワンダーをはじめとする後続のニュー・ソウル勢や、後のプリンスやディアンジェロなどの自作自演派の黒人ミュージシャンに尋常じゃない影響を与えたのは明白。
そういったメッセージやアティテュードの部分がまずは語られるのだけれど、このアルバムの持つ溢れ出るような音楽的な豊穣感こそ、本作の今なお尽きることの無い神通力の源泉だと思う。いかにもモータウン的なポップ・ソウルを排した、ソウル、ジャズ、ゴスペル、ラテンのハイブリッド・サウンドは、当時にしてかなり先進的だったはず。何より凄いのが、異種混淆の音楽性ながら、奏でられる音楽はゴッタ煮でゴツゴツした質感にはならず、スムーズに洗練され、口溶け滑らかでシルキーな肌触りであり、同時に崇高で霊的な感触も持ち合わせていることだ。続けて何度も繰り返し聴きたくなる、まさに不朽の名作。