3121
3121/Prince
 Universal '06

ロックの殿堂入りとか、グラミーでのビヨンセとのパフォーマンスとか、伝説のスーパーボール・ハーフタイム・ショウとか、殿下がオーバー・グラウンドへと帰還し色々と盛り上がってた機運の中リリースされたアルバム。結果、『Batman』以来17年ぶりの全米アルバム・チャート1位、しかもキャリア初の初登場1位というオマケ付きのヒット作。
本作でヒット・チャートにも返り咲いたプリンスだが、ミネアポリス臭漂う80年代っぽいサウンドに回帰しているあたりも、自分を含めオールド・ファンには堪らないアルバムだ。もちろん、昔の自らのオリジナル・サウンドをただ焼き直しているだけではなく、(当時の)現行R&Bの意匠も取り込みつつアップ・デートを図っているのは流石だ。
オープニングのタイトル曲「3121」は、背筋がゾクゾクするようなへヴィーに歪んだスロー・ファンクで、まさにあの頃のロイヤル・バッドネスなサウンドに、否が応にも期待が高まる。タイトルからして『Dirty Mind』『Controversy』あたりの作風を想い起こさせる「Lolita」は、期待通りのシンセ・ポップ・ファンク。「Te Amo Corazon」は何故かラテン調のスロウで何だか拍子抜けだが、続く「Black Sweat」は特大・極太の一発。淫靡な蠕動を繰り返すシンセ、ミニマルなファンク・ビート、舌舐めずりするようなファルセットが堪らない。これは「Kiss」や「Sign Of The Times」の発展型とでも言えそうな極上ファンク。余裕のアーバンR&Bテイスト「Incense And Candles」、『1999』あたりのレトロ・フューチャーなブギー・ファンク「Love」、ねっとりファルセットで歌い上げるソウル・バラード「Satisfied」、紫のバイクに跨って疾走しそうなダサカッコいい青春ロック「Fury」、アコギが印象的な不思議な雰囲気の「The Word」、当時殿下の庇護下にいた女性シンガー、テイマーをフィーチャーした「Beautiful,Loved And Blessed」は良く出来たR&Bナンバー、タイトルから受ける印象とは大きく異なる荘厳な雰囲気の「The Dance」、ラストは宗教臭い歌詞がトゥー・マッチだが、カッコいいバンド・ファンク「Get On The Boat」。
この後、殿下は再びメジャーを離れ、マイペースな活動に戻って行く。