plectrumelectrum
Plectrumelectrum/Prince & 3rdeyegirl
 Warner '14

『Art Official Age』と同時リリースとなった、サード・アイ・ガールとの連名作。
これまでも殿下は庇護下のアーティストを数多くプロデュースし作品をリリースしてきたが(そのほとんどが眉目秀麗な女性)、このアルバムは連名だけに本気の度合いが違うということか。しかも、レヴォリューションやニュー・パワー・ジェネレーションはあくまでプリンスのバック・バンドという位置付けだったのに対し、このアルバムでは殿下以外がリード・ヴォーカルを取る曲も多く、プリンスはバンドのフロントマンではあるが、4ピースのバンドのメンバーの1人というスタンスを打ち出している。もちろん、実際にはプリンスが主導して制作したことには違いないだろうが、それでもこれまで以上にバンドとしての色、まとまりを強く打ち出しているのは確かだ。
アルバムはダイナミズム溢れる生のバンド・サウンドで貫かれており、何よりロックだ。『Art Offcial Age』とは完全に方向性が切り分けられていて、ほとんど捻りのない剛球ストレートなアルバムだ。もちろんプリンスのギターをたっぷりと堪能できる。
スターターの「Wow」はプリンスがヴォーカルを取るロック・バラード的な曲調で、終盤は大いに盛り上がる。プリンスのリード・ヴォーカルをサード・アイ・ガールの掛け声が囃し立てる「Pretzelbodylogic」は本作のハイライト。重厚なへヴィー・ファンク・ロックでこれはカッコいい。「Aintturninround」はサード・アイ・ガールがヴォーカルを取るロック・ナンバー。タイトル曲「Plectrumelectrum」はインストで、これもストレートなへヴィー・ロック・チューン。サード・アイ・ガールがヴォーカルのバラード「Whitecaps」は、何となくウェンディ&リサっぽい雰囲気がある。「Fixurlifeup」もド直球なロック。
アルバム後半は多少曲の幅が広がり、ヒップホップ的なビートを取り入れた「Boytrouble」、タイトルから何となく想像がつくが、レゲエっぽいニュアンスを滲ませる「Stopthistrain」、ポップな「Tictactoe」などで緩急をつける。ラストはまさにファンクでロックな「Funknroll」。
それにしても、このようなカタチでファンクとロックを切り分け、2枚のアルバムを同時リリースすることを認めたワーナーの度量の広さたるや。おそらくクリエイティヴ・コントロールは全面的に殿下に委ねられていると思われ、非常に恵まれた環境が整っていると言えるのではないか。聞く所によると、ワーナーは過去の原盤権もすべて殿下に返還したらしい。これほど良心的なレーベルも他にないだろう(しかもメジャーで)。あの泥沼の闘争も、ワーナーの主張は至極真っ当で、殿下の身勝手なエゴが引き起こしたものだったのだ、と今にして思う。願わくば、殿下とワーナーの幸福な関係が、そしてワーナーの忍耐が出来る限り長く続きますように。