brown sugar
Brown Sugar/D'angelo
 EMI '95

90年代後半に隆盛を誇ったニュー・クラシック・ソウル。その流れに先鞭をつけた、エポック・メイキングなディアンジェロのデビュー作。大量のフォロワーを生み出し絶大な影響力を誇ったこのアルバムは、90年代のブラック・ミュージックにおける最重要作。ディアンジェロに先駆けていたトニ・トニ・トニや、ディアンジェロの登場が呼び水となって顕れた、マックスウェル、エリック・べネイ、ラサーン・パターソンなどそれぞれに個性的な自作自演派など、一連のニュー・クラシック・ソウル作品の中で、やはりこの『Brown Sugar』がブレイク・ポイントだったのは間違いない。
アルバムは、ディアンジェロ自身も多くの楽器を担当した生の演奏を基調としつつ、プログラミングも交え、温かみのあるソウル・サウンドとヒップホップ的なクールな肌触りが理想的なバランスで融合している。ディアンジェロのヴォーカルはファルセットから地声まで抑制を極め、マーヴィンっぽく複数のラインを重ね合わせ、絶妙な塩梅でグルーヴに溶け込んでいく。70年代ソウルを参照しながらも極めて現代的に響く音であり、このあたりはエンジニアのボブ・パワーの貢献度は非常に大きいと思われる。ちなみに、『Voodoo』で露わになるプリンスへの憧憬は、ここではまだほとんど感じられない。
アリ・シャヒードと共作したタイトル曲「Brown Sugar」は、重いベースに揺らめくローズ、ジャジーでクールなグルーヴがあまりにカッコいい名曲。ビートに自在に纏わるディアンジェロのヴォーカルも素晴らしい。ブレイク・ビーツ的なフックを携えた「Be Alright」、ガシガシのドラム・ビートの上にメロウに濡れたローズの音が零れ落ちる「Jonz In My Bonz」、ジャジーな湿り気もありつつ、南部風情の温もりも感じさせる「Me And Those Dreamin' Eyes Of Mine」、プリンス「Bob Geroge」の救いの無い歌詞を連想させる「Shit,Damn,Motherfucker」、ヒップホップ経由のジャジー・スムーヴ「Smooth」、まさにクワイエット・ストームな、スモーキー・ロビンソンの素晴らしいカバー「Cruisin'」、ジャジーにスウィングするミディアム「When We Get By」、まったり寛いだ雰囲気のラファエル・サディーク共作の「Lady」、ラストはアーシーな南部ゴスペル・ソウル「Higher」。