around the world in a day
Around The World In A Day/Prince & The Revolution
 Warner '85

プリンスのキャリアにおいて、最もファンク度、ブラック・ミュージック濃度が薄い、いわば極北に位置するアルバム。
前作『Purple Rain』の妖しく毒々しくギラギラした雰囲気とも、次作『Parade』のモノクロームでストレンジな音像とも異なる、ほんわか暖かくポップな作品。ジャケットの通り色彩豊かなサウンド、サイケではあるがアシッドな臭いがしないあたりは殿下らしいところ。殿下のソング・ライティングの才をひしひしと感じさせる良曲が粒揃い、またウェンディ&リサの貢献の大きさも感じさせる。
中近東風のイントロが意表をつくタイトル曲「Around The World In A Day」でスタート、続く「Paisley Park」はほんわかミディアムの重要曲。「Condition Of The Heart」は、オーケストラと対峙するプリンスのピアノ弾き語りジャズ・バラード。フィドルっぽいヴァイオリンが印象的なポップでキャッチーな「Raspberry Beret」、アルバム中唯一ファンキーでセクシャルな「Tamborine」は短いが非常に好きな曲。シリアスで政治的な「America」はやや単調な曲だが、続く「Pop Life」はエバー・グリーンな超名曲。シーラ・Eのドラムス、ウェンディ&リサのコーラスが曲を美しく彩る。「The Ladder」も、ウェンディ&リサのコーラスを従え説教たれるプリンス流ゴスペル。ラストのブルース・ロック「Temptation」では、今更"愛はセックスよりも大事"などとのたまう殿下。ソウル耳にはちょっとハードルの高いアルバムかもしれないが、やはりプリンス黄金期を代表する名盤だ。