understanding
Understanding/Bobby Womack
 United Artists '72

ラスト・ソウルマンことボビー・ウォマックは、サム・クックの影響下にあるディープなソウル・シンガーとしての評価がやはり先に立つが、時代を読む卓越したセンスと技量をも持ち合わせ、ギタリストとしての腕も一流の稀有なソウル・スタイリストだ。アルバムも数多いが、やはりニュー・ソウルに呼応した『Commnication』『Understanding』を含むユナイティッド・アーティスツ時代がピークだろうか。

この『Understanding』は、マッスル・ショールズ録音らしい南部の土臭いサウンドを残しつつも、ニュー・ソウル的な洗練と、スライ経由のファンクネスも感じさせる。ウォマックは『暴動』セッションに参加しているが、「I Can Understand It」「Simple Man」は特にスライからの影響を感じさせるファンク・チューンだ。
「I Can Understand It」はウォマックらしいメロディー・ラインを持つが、曲後半はインスト主体でハードに展開していく。ドスンと打ちつけるバスドラの一撃一撃、ウネるキーボードのラインもファンキー。印象的な女性コーラスにはパム・グリアも参加。
「Simple Man」はよりキーボード主体のファンクで、ファズ・ギターもウニャウニャと唸る、とてもマッスル・ショールズの面々がバックを付けているとは思えないヘヴィー・ファンク。

ウォマック最大のヒットで、今日まで数多のカバーを生んだソウル・クラシック「Woman's Got Have It」は、催眠的なベース・ラインとメロウなギター・リフでクールに進行しつつ、サビで一気にウォマック節に染め上げる大名曲。その深く潜行するようなグルーヴは「Family Affair」っぽくもある。個人的にもウォマックで一番好きな曲だ。

ジミー・ルイス作の温かな雰囲気のミディアム「Got Get You Back」、カントリー・テイストも臭わせる「Ruby Dean」、冒頭のふくよかなホーンからホッコリさせてくれる「Thing Called Love」といったサザン・ソウル・ナンバーももちろん良く、なかでも「Harry Hippie」は渋味溢れる名バラード。伝統的なサザン・ソウル・スタイルの曲も、ウォマックがやると都会的な感覚が絶妙に混ざるところがイイ。

「And I Love Her」「Sweet Caroline」みたいな有名曲のカバーも、ウォマックの塩っ辛いディープなヴォーカルで黒く塗りこめる。ここでのウォマックのカバーを聴いてしまった後では、原曲が物足りなく聴こえてしまいそう。