black messiah
Black Messiah/D'angelo & The Vanguard
 RCA '14

約15年ぶりのアルバム『Black Messiah』。
ディアンジェロとほぼ同世代で、同じく多感な10代の頃にプリンスに影響されまくった身としては、ディアンジェロには一方ならぬ思い入れがある。『Voodoo』のリリースは2000年1月、20代半ば。まさか次のアルバムを40歳過ぎまで待たなければならないとは、思いもよらなかった。
アルバム・タイトルは、数年前からアナウンスされていた『James River』から『Black Messiah』に変更となり、ヴァンガード名義でのリリース。参加メンバーはクエストラヴ、ピノ・パラディーノ、ロイ・ハーグローヴ、スパンキー・アルフォードら『Voodoo』組(当時のバンド名はソウルトロニクス)に加え、クリス・デイヴ、ジェシー・ジョンソン、アイザイア・シャーキー、ケンドラ・フォスターら、2013年の復活欧州ツアー組(この時のバンド名はテスティモニー)、更にジェイムス・ギャドソンの名前も。ディアンジェロ自身もギター、ベース、ドラムス、キーボードを演奏し、もちろん全ての作曲・プロデュースをこなす。大半の曲でケンドラが共作しているのは興味深い。10年ほど前からクリントン作品で重用されているシンガーだが、まさかここでディアンジェロに大きく関わってくるとは意外だった。
このアルバム、最初は、『Voodoo』と比べて随分聴き易くあっさりした印象だったが、いやいや、何度も聴いていると、実にしぶとい。引きずるようなダルなドラムスと、重くモタったベースから繰り出されるドス黒いグルーヴは本作でもキモになっているが、『Voodoo』までとの大きな違いはギターの音がかなり前に出てきているところか。ディアンジェロのメインの楽器と言えばキーボードだったと思うが、本作ではギターに持ち替えているようで、このあたりはジェシーの影響だろうか。ワン・グルーヴで徹頭徹尾こねくり回す『Voodoo』よりは、楽曲の幅が広がっていることが、聴き易いと感じた原因だが、何度も繰り返し聴きたくなる中毒性、常習性と、聴き込みに耐えうる耐久力は『Voodoo』並みの強力さだ。
1曲目の「Ain't That Easy」から、あのモタモタしたタメの効き過ぎたグルーヴ。イキそでイカない、焦らしまくる黒いリズムと、抑制されたディアンジェロのヴォーカルが堪らない。続く「1000 deaths」は、70年代初頭のスライやファンカデリックを彷彿とさせる、凶暴で悪魔的なファンク。ドクドクと脈打つファンク・ビートに、グシャグシャに掻き鳴らされるアシッドなギター、歪なグルーヴがクセになる。これはヤバい。ややロック寄りの「The Charade」、ジャイヴ感溢れるファンク・チューンの「Sugah Daddy」あたりは、プリンスからの影響が垣間見える。一転、「Really Love」はメランコリックなラテン調R&B。
「Back To The Future(Part 1)」は「The Root」系のグルーヴ・トラックだが、ギターのリックが効いている。ジャジーな浮遊感が気持ちいい「Till It's Done(Tutu)」、「Prayer」のズルズルと引きずるドラムスとベース、煙たい酩酊グルーヴに蕩ける。「Betray My Heart」は「Spanish Joint」系のジャジー・グルーヴ。「The Door」はフォーキーと言うか、カントリー・ブルース調で、スチール・ギターと口笛が土臭いソウルを感じさせる。「Back To The Future(Part 2)」を挟んで、ラストの「Another Life」はシタールの妖しい響きがフィリーっぽさも醸し出すソウルフルな名曲。
スライには『暴動』と『Fresh』、プリンスには『Parade』と『Sign Of The Times』という甲乙付けがたい2大傑作があるように、ディアンジェロもついに『Voodoo』と並び立つマスターピースをモノにした。JB-スライ-Pファンク-プリンスと繋いできた、革新ファンクの系譜の正統後継者であることを15年がかりで証明して見せた。願わくば、次は5年ぐらいでサクッと出してほしいものだ。