house of music
House Of Music/Tony Toni Tone
 Mercury '96

トニ・トニ・トニは大好きなグループ。90年の2nd『Revival』からリアル・タイムで聴いたが、93年の3rd『Sons Of Soul』は特に聴きまくった。当時、70年代のファンク/ソウルを聴き漁り、メイン・ストリームのR&Bに馴染めなかった自分にとっては、70年代のファンク/ソウル・サウンドをヒップホップやニュー・ジャックのフィルターを通して蘇らせたような『Sons Of Soul』は、自分にとっては理想的な現在形のソウル・ミュージックだった。
この4th『House Of Music』は、まだ青臭さが少し残っていた(そこが良いのだが)『Sons Of Soul』よりも落ち着いた雰囲気で、ファンク度はやや減退しているが、それを補って余りある成熟っぷりで、豊穣なソウル・ミュージックがたっぷり詰まっている。『Sons Of Soul』に並ぶ傑作と言っていい。
アルバムのほとんどの曲は、ラファエルとドウェイン(+ティモシー)がそれぞれ別に制作したトラックを持ち寄ったものであり、3人揃って制作にあたったのは、70年代のハイ・サウンドをアップ・デートしたようなミディアム・ソウルの「Thinking Of You」1曲のみ。兄弟間に複雑な感情があることを思わせるようなこの距離感、加えてティモシーの影の薄さは、結果的にこのアルバムがグループの最終作となることを暗示しているかのようだ。
ラファエル制作曲は、不思議な浮遊感のあるミディアム「Top Notch」、DJクイックのラップをフィーチャーしたファンキーな「Let's Get Down」、アースみたいな爽快グルーヴが気持ちいいミディアム・ソウル「Lovin' You」、スタックス調のサザン・ソウル・バラード「Still A Man」、これも南部風情のミディアム「Don't Fall In Love」、ドラムスとストリングスが印象的なスロウ「Let Me Know」、地元の先輩タワー・オブ・パワーのホーン・セクションを起用した、「Just When We Start Makin' It」や「Willing To Learn」を彷彿とさせるスロウ「Wild Child」と、決してハズさないプロデュース・ワークを見せつける。
一方、ドウェインの制作は、フィリー風味のシタールが入ったスウィートな絶品スロウ「Til Last Summer」、これまた素晴らしいスロウの「Holy Smokes & Gee Whiz」は、親族と思しきランダル・ウィギンスなる人物が、ラファエル似のファルセットを聴かせる。「If You Want Me To Stay」風のフレーズのコーラスを忍ばせる、同郷の偉人スライへのオマージュのようなファンク「Annie May」、やや現代R&B調のミディアム・スロウ「Tossin' & Turnin'」、ジャジーなミドル・チューン「Party Don't Cry」と、兄貴の意地を見せる渾身の仕事っぷり。
日本盤はボーナス・トラックが2曲追加されているが、これが何で本編から漏れたか理解に苦しむ良曲。ドウェイン制作と思われるミッド・ファンク「Fire It Up」、「Say My Name」はラファエル制作らしき地味渋ミドル。どうせなら日本盤で持っていたいところだ。