small talk
Small Talk/Sly & The Family Stone
 Epic '74

『Stand!』『暴動』『Fresh』と歴史的名盤3連発の後の、静かなる佳作。
前作『Fresh』のキモだったアンディー・ニューマークが抜け、またも白人ドラマーのビル・ローダンが加入。このローダンのドラムがどうも色気が足りない。肝心のスライも何だか毒気が薄くなってしまった印象で、終わりの始まりを予感させる。各曲はそれぞれに魅力はあるのだが、以前の神憑ったアルバム群と比べると、憑き物が落ちた感じは否めないところ。同時代の他のファンク・バンドに対するアドヴァンテージも最早無く、かつての盟友ラリー・グラハム率いるグラハム・セントラル・ステーションの74年作『Release Yourself』と比べても、ファンク・アルバムとしては贔屓目に見ても拮抗している。
アルバムはタイトル曲「Small Talk」で幕を開けるが、抑制されたグルーヴにスライが小声でぼそぼそと呟く蓄膿症ファンクで、ジワジワくる感じがいい。「Say You Will」「Time For Livin'」は、新加入のシド・ペイジのヴァイオリンが新機軸を打ち出すミディアムのファンク/ソウル・ナンバー。「Mother Beautiful」は嫋やかなスロウ、「Can't Strain My Brain」は気だるく物憂げなスロー・ファンク。
「Loose Booty」は本作中最も快活でアッパーなファンク・チューンで、呪文の様なサビのフレーズは「I Want To Take You Higher」を思い起こさせる。「Holdin' On」はずっしりタメの効いたミッド・ファンクで、個人的にはベスト・トラック。まったりスロウの「Wishful Thinkin'」、南部の酒場から聴こえてきそうな「Better Thee Than Me」は、土臭いヴァイオリンがいい味。テンポの早い「Livin' While I'm Livin'」、ドゥー・ワップ調の「This Is Love」と、アルバム終盤は振り幅と緩急をつけて飽きさせない展開。
現行CDにはボーナス・トラック4曲が追加されているが、これが意外に面白い。「Crossword Puzzle(Early Version)」は次作『High On You』に収録されている後期スライ随一の傑作ファンクだが、曲の核となるあのヴァイオリンのアレンジとは異なり、シンプルなバンド・サウンドでファンクする。正規版の方がもちろんいいのだが、これはこれでカッコいい。「Time For Livin'(Alternate version)」「Loose Booty(Alternate Version)」は共に正規版よりもラフな感触。「Positive」もやや粗削りながら、攻撃的なファンク・グルーヴはなかなか聴かせる。