computer games
Computer Games/George Clinton
 Capitol '82

クリントンにとって80年代は辛酸を舐め尽した苦難の時代だ。
ワーナーと揉めて契約を切られ、頼みのカサブランカも、レーベル・オーナーで最大の理解者であったニール・ボガートの死で後ろ盾を失い、レーベルを去る。アテにしていたロジャーにも逃げられ、CBS傘下に立ち上げた自主レーベル、アンクル・ジャムも頓挫。経済的に行き詰ったクリントンは、バンド・メンバーにギャラを払えなくなり、ツアーの途中でバンドの解散を一方的にメンバーに言い渡し、70年代後半に一大勢力を築き上げたPファンク軍団は呆気なく解体。
それでも、やはり転んでもタダでは起きないクリントン、キャピトルと何とか契約を取り付け、ソロ名義でアルバム4枚リリースする。この時、かつての金看板であるパーラメント、ファンカデリックの名義を使わなかったのは、またもや何か契約上の問題で使えなかったのか、それともリスナーから時代遅れとの印象を持たれることを避けるためか。ともかく、死に体だったはずのクリントンが、ここからまさに起死回生の一発を放つのだから、つくづくシブとい御仁だ。このキャピトル1作目『Computer Games』から「Atomic Dog」がよもやのR&Bシングル・チャート4週連続No.1の特大ヒット。クリントンの長いキャリアで最大のヒットとなった。キャピトルでアルバム4枚出せたのは、この「Atomic Dog」の一発ヒットの恩恵だろう。
バンド解体により参加メンバーは激減。ブーツィーは付き合い程度に1曲だけ、ジュニーは3曲関わっているが、自分のアルバムのアウトテイクのような曲を提供してお茶を濁す始末。そんななか、制作の中心としてクリントンを支えるのは、バーニーの後釜として70年代末から加入したデイヴィッド・スプラドリィ。シンセサイザーを駆使したエレクトロ・ファンク・サウンドは、時代の要請でもあったのだけれど、あの黄金の70年代Pファンク・サウンドを一度味わってしまうと、どうにも物足りなく感じてしまう。それよりも、まだ83年にPファンク・オール・スターズ名義でリリースされた『Urban Dancefloor Guerillas』の方が生っぽい感触があって好きだが、この『Computer Games』も、キャピトル期の他の3枚に比べればまだ聴き応えがある。
やはり何と言っても本作の目玉は「Atomic Dog」。「Let's Play House」系のズブズブ沈みこむようなリズムのシンセ・ファンクで、スプラドリィの手腕が光る。80年代のエレクトロ・ファンクのひとつの雛形となったほか、後にサンプリングされまくり、西海岸のヒップホップの心臓音となった。その他、「Get Dressed」は本作中唯一ブーツィーが関与した曲で、アレンジはブーツィーとフレッドだけに、まだ往年のPファンク・マナーを色濃く残している。「Man's Best Friend」「Loopzilla」は一続きになった曲で、前半の「Man's Best Friend」は例によって「(Not Just)Knee Deep」タイプの曲。後半の「Loopzilla」は延々と繰り返すリズム・トラックに、「Dancing In The Streets」「I Can't Help Myself」といったモータウン・クラシックスや、過去のPファンク・ナンバーの他、クリントンとの因縁浅からぬザップ「More Bounce To The Ounce」などのフレーズを乗っけるメガ・ミックス的発想の曲。レゲエ調の「Free Alterations」は凡庸な曲。
ジュニー絡みの3曲は、「Pot Sharing Tots」は随分可愛らしいポップな曲で、ジュニーの「Bread Alone」あたりを連想させるが、あまり面白いとは思えない。タイトル曲「Computer Games」は割りと真っ当なPファンクだが、やや単調。「One Fun At A Time」も特に引っ掛かりのない曲。本作は、基本クリントンが一人で歌っているので、かつてのパーラメントのような多彩なヴォーカル表現による曲の肉付けがないため、リズム・トラック自体に面白味のない曲は正直厳しい。