harvest for the world
Harvest For The World/The Isley Brothers
 T-Neck '76

73年の『3+3』宣言以降、剛毅な骨太ファンクと、センシュアルな官能スロウの両刀使いで驀進した全盛期アイズレーだが、この『Harvest For The World』はメロウ・アイズレーの最右翼アルバムで、カッチカチのファンク・サウンドはやや軟化。ファンクなアイズレーを期待すると肩透かしを喰らうおそれあり。おそらく、音楽性の幅やポテンシャルを広げ、アルバム・トータルとしての芸術性や完成度を目指したが故の戦略と思うが、エンジニアのマルコム・セシルの色が強く出ているとも言える。セシル自体はロバート・マーゴレフと共に『3+3』から関わっているが、本作からマーゴレフとのコンビを解消し単独での参加となったことでタガが外れたのか、他のアイズレー作品では然程感じなかったスティーヴィーのサウンドとの親和性が強くなっていると思う。セシルはギル・スコット・ヘロンとも77年の『Bridges』から仕事をしているが、この『Bridges』もやはりスティーヴィーっぽい。ファンクなアイズレーが好きな身としては些か寂しくはあるが、それでもこのアルバムもやはり傑作に違いない。徐々に才能を露わにしてきたクリス・ジャスパーが、ここでも非凡なセンスを見せつけてくれる。
それにしてもこのジャケット。これまでもその個性的なファッションを披露してきたアイズレー兄弟だが、特に次兄ルドルフの突き抜けたファッション・センスはヤバい。何なんですかこの衣装は。『Live It Up』や『Showdown』のジャケットもそうだが、他の兄弟達よりひと回りデカい図体にギンギラ衣装を纏い、センターに堂々と鎮座。隣に座るロナルドがフロントマンとは思えないぐらい小っちゃくなってる。アイズレーを知らない人がコレ見たら、まず100%ルドルフがリード・シンガーだと思うでしょ、何だか歌えそうな顔してるし。実際はほとんど何もしてない(?)人なんだけど。
アルバムは、ムードたっぷりの壮麗な導入部分「Harvest For The World(Prelude)」から、アコギが印象的なグルーヴィー・メロウ「Harvest For The World」へ。この流れが素晴らしく、アイズレー及びセシルの狙い通りアルバムのトータリティや芸術性を高める演出になっている。「Harvest For The World」は何となくスティーヴィーの影がちらつく(「Golden Lady」とか)。「So You Wanna Stay Down」もアコギが印象に残るが、これも爽快な疾走感に溢れた良い曲。スロウは「(At Your Best)You Are Love」「Let Me Down Easy」の2曲とも名曲。一般的には「(At Your Best)You Are Love」の方が人気だが、クリスのメロウに蕩けるシンセ使い、ロナルドの抑制された濡れたノドが背筋を撫でる様な「Let Me Down Easy」は、個人的にはアイズレーのバラードの中でも一番好きな曲。
残りはファンク曲だが、「People Of Today」は佳曲だが、やはりどことなくスティーヴィーっぽさを感じる。スロー・ファンクの「Feel The Need」は重さが足りない。どちらの曲も、「Live It Up」や「Fight The Power」のような硬質さに欠けている様な気がする。もう1曲の「Who Loves You Better」は、タイトルも似ている「Hope You Feel Better Love」タイプのロッキッシュに疾走するファンクで、火を噴くアーニーのギターがカッコいい。