lets get it on
Let's Get It On/Marvin Gaye
 Tamla '73

名盤連発の70年代のマーヴィン、これもまた傑作。
『What's Going On』ではラヴソングを封印していたが、このアルバムではタガが外れたのか、エゴ丸出しのエロソウル一直線。当時17歳の新恋人ジャニスに対して、こうも露骨にせまる34歳のマーヴィンは人としてどうかと思うが、それが芸術として昇華され素晴らしい作品になっているのだから、もう天才というより他はない。70年代マーヴィンとしては最も熱いシャウトを聴かせるのも、ジャニスへの熱い迸りの表れだろうか。
プロデュースはマーヴィンとエド・タウンゼント。演奏はジェイムス・ジェマーソン、ポール・ハンフリー、ワー・ワー・ワトソン、デイヴィッド・T・ウォーカー、エディ・ボンゴ・ブラウン、クルセイダーズからウィルトン・フェルダーとジョー・サンプルなど、西海岸きってのソウル~ジャズ人脈。前作での洗練されたジャジーな感触は後退し、アーシーでソウルフルなサウンドになっている。
タイトル曲「Let's Get It On」の冒頭の、ワー・ワー・ワトソンのスケベなワウ・ギター一発で骨抜きにされる。ハンフリーのドラムスがガッチリとグルーヴをキープし、焦らすようなゆったりしたテンポで体中揉み解されるような究極のエロ・ソウル。「Please Stay(Once You Go Away)」もハンフリーがグルーヴ・マスターっぷりを発揮。行かないでくれと懇願するマーヴィンに男も濡れる名曲。震えがくるような名バラード「If I Should Die Tonight」、「Keep Getting It On」は「Let's Get In On」の続編のようなジャム。
ジーン・ペイジのアレンジが映える「Come Get To This」はシャッフル調のミディアムでこれも名曲。「Distant Lover」はレイディースに人気の不思議な浮遊感のあるバラード。「You Sure Love To Ball」は『I Want You』に通底する官能メロウ・スロウ。ラストの「Just To Keep You Satisfied」は暗いムードのなかマーヴィンの歌に酔いしれるバラード。
デラックス・エディションは未発表曲てんこ盛り。特に良いのは、ハービー・ハンコックとのセッションによる3曲で、なかでも「Song #3」と題されたインスト曲は豪奢なビッグバンド・ソウル・ジャズで素晴らしい完成度。他にもウィリー・ハッチによる60年代的なノーザン・ソウルなど、かなりの掘り出しモノ度。