graffiti bridge
Graffiti Bridge/Prince
 Warner '90 

80年代に輝かしい足跡を残したプリンスが、90年代の一発目にリリースした12thアルバム。
正直に言えば、当時、このアルバムを聴いて随分複雑な気持ちになった。80年代には、誰も寄せ付けないような孤高の音楽をつくっていたプリンスが、ここでは時代におもねるような雰囲気がある。流石にどの曲もクオリティは頗る高く、一級品のポップ・ミュージックだが、当時はそれを素直に受け入れられなかった。映画は未見だが、アルバムのブックレットに写る、セット感丸出しのハリボテ橋を見てゲンナリしたものだ。一方で、このアルバムに収録された「We Can Funk」をきっかけにPファンクに興味を持つようになったワケで、自分にとっては重要な忘れ難きアルバムでもある。
あれから四半世紀経った今、改めてこのアルバムを聴いてみると、今更ながら良質なファンク/ソウル・アルバムだったことに気付く。ザ・タイムやメイヴィス・ステイプルズらゲストがメインの曲が多いため散漫な印象を受けるし、つまらないと思う曲もあるが、それでもここに在るのはプリンスにしか成し得ない音楽だ。
アルバムは軽快なポップ・ロック・チューン「Can't Stop This Feeling I Got」でスタート。続く「New Power Generation」は、次作以降のバンド名となり、現在まで使われ続ける重要なフレーズをタイトルに持つ曲。この言葉自体は『Lovesexy』の頃から使われているが、当時は何となくダサいフレーズだなぁと思っていて、この曲自体も肩に力が入り過ぎたパワー・ポップ・ファンクでちょいダサ。だが今聴くとそんなに悪くないかも。ラップをフィーチャーした「New Power Generation(Pt Ⅱ)は、まだこの頃はトニーMではなくT.C.エリスだが、いずれにしろ凡庸なラッパーで面白くない。
1曲目もそうだが、本作は過去に作った未発表のマテリアルをブラッシュ・アップして収録した曲を数曲含んでいる。個人的最重要曲「We Can Funk」も過去の未発表曲をベースにクリントンを招いて作り直したもの。この曲はいわゆるPファンクではないが、この曲で初めてジョージ・クリントン、そしてPファンクというものを知った。これは今聴いてもシビれる名曲。
ブルージーなスロー・ファンク「The Question Of U」、ギターが嘶く哀愁スロウ「Joy In Repetition」、プリンスらしさ全開のナスティー・ファンク「Tick,Tick,Bang」、アラビック~インド風味の地味目な先行シングル「Thieves In The Temple」もいい。
ゲスト・メインの曲では、やはりザ・タイムの3曲が良く、タワー・オブ・パワー「Squib Cakes」のドラムをビートに敷いたファンク「Release It」は特にカッコいい。メイヴィスの「Melody Cool」はドスの効いたソウルで、流石の貫禄。クインシー・ジョーンズの秘蔵っ子としてデビューしたばかりのテヴィン・キャンベル「Round And Round」は正直要らないかも。
問題なのはタイトル曲「Graffiti Bridge」。何とも大仰、かつサラッとし過ぎていて引っ掛かりの無いポップ・バラード。メイヴィスとテヴィンも参加して盛り上げるが、プリンスらしさは希薄。前作の「The Arms Of Orion」もそうだが、この頃のプリンスのバラードは水で薄めたような大衆MORが多かったりするのは残念。