main ingredient
The Main Ingredient/Pete Rock & C.L. Smooth
 Elektra '94

DJ、プロデューサーのピート・ロックと、MCのC.L.スムーズのコンビによる2ndアルバム。
ソウル、ファンク、ジャズの偉大な遺産を掘り起こし、丁寧に磨きをかけて組まれたピートのトラックは、普段ヒップホップを聴かないファンク/ソウル耳にも違和感なく馴染む。ソウルフルでジャジーなサウンドは、その名のとおりスムーズなC.L.のラップにぴったりとマッチしている。
1st『Mecca And The Soul Brother』は洗練されつつも埃っぽいザラついた質感を残していたが、本作は更に洗練極まった印象。ガシガシの太いビートにエレピやヴィブラフォンなどメロウなウワものが気持ちよく流される。1stで印象的だったホーン・サンプリングはやや控え目な印象ではあるが、ビートとサンプリング・ループとラップが見事に調和した黄金サウンドは、すべてのヒップホップ作品中でも最上位に位置する逸品。
ぶっといビートとメロウなウワものの組み合わせが本作を象徴するような「In The House」、クール&メロウな激渋トラック「Carmel City」、ジョージ・ベンソンのギター・ループが気持ち良過ぎる「I Get Physical」、1stアルバムっぽいホーン・サンプルを導入したソウルフルな「Sun Won't Come Out」「I Got A Love」、JB「Escape-Ism」のサンプルが揺らめくファンク・トラック「Escape」など、アルバム前半はアッパーに攻める。
一方、アルバム後半はメロウ・サイド。ドナルド・バード「Places And Spaces」の旋回するストリングスをサンプリングした「All The Places」、ケニ・バーク「Rising To The Top」使いのR&B調「Take You There」、ロイ・エアーズの同名曲をサンプリングした微睡みのメロウ・グルーヴ「Searching」など、気持ち良すぎて何度もリピートしたくなる。
抜群のコンビネーションを誇ったチームも本作をもって呆気なく解散。ピートはプロデューサーとして90年代前半に数々の名仕事を残し、自身のリーダー作も発表するなど活躍したが、やはりピートのトラックとの相性という意味では、C.L.以上のMCはいないことが本作を聴けば分かる。