payback
The Payback/James Brown
 Polydor '73 

70年代前半のJBは、ブーツィーらが去った後、フレッド・ウェズリーの音楽監督のもと、すぐさまバンドを立て直し、「Hot Pants」や「There It Is」、「Make It Funky」などのファンク・クラシックを輩出。一方、JB's名義でもジャズ・ファンク名盤をモノにするなど、まだまだJBの神通力は健在かに思われた。
しかし、72年頃になると様子が変わってくる。『Shaft』や『Superfly』に触発されサントラ仕事に手を出してみたり、ニュー・ソウルに影響されたかコンセプチュアルな2枚組大作を連発するなど迷走が始まる。この『The Payback』もそうした時期にリリースされた2枚組アルバム。2枚組だが全8曲で、1曲がやたら長い。アイディア一発、ワンコードで延々と続くジャムは、残念ながら多くの曲ではテンションもグルーヴも最後まで持続せず、水増し感有り。本作はJB'sのヘヴィー・ファンク傑作『Damn Right I Am Somebody』と同セッションで録音されたらしいが、本作もダラダラ引き延ばさずコンパクトにまとめていれば、『Damn Right I Am Somebody』みたいなカッコいいアルバムに仕上がっていたかもしれないのに、もったいない。
このアルバムはタイトル曲「The Payback」1曲のためだけにあると言ってもいいぐらい、この曲は70年代JBでも相当上位に位置する曲。延々と刻み続けるやたらカッコいいギター・カッティング、脈々とウネるファンク・グルーヴ、気合の入ったJBのヴォーカル、ヒリヒリするような緊張感が漲る傑作ファンク。
その他、ルーズなノリのミッド・ファンク「Take Some...Leave Some」、スリリングなのにどこかユルい「Shoot Your Shot」、「La Di Da,La Di Day」を焼き直したような「Time Is Running Out Fast」、「I Got Ants In My Pants」のプロト・タイプといった趣きの「Stone To The Bone」、ギターがストイックにカッティングを刻み続ける「Mind Power」など、ファンク・ナンバーはどうもユルく締りがない印象。所々にカッコいいフレーズやグルーヴが聴こえてくるだけに、もっとタイトに仕上げていればと、何とも惜しい気持ち。2曲あるバラードは正直聴くに耐えない出来。