sons of soul
Sons Of Soul/Tony Toni Tone
 Mercury '93 

マーヴィンの「Sexual Healing」は革命だったが、高いギャラを払ってミュージシャンを雇わなくても、シンセサイザー1台あればヒット曲を生み出せることを証明してしまった。フォロワー達は「Sexual Healing」に宿っていたミュージシャンシップや独創性を排除し、形式だけを拝借し手軽なR&Bテンプレートとして使い回し、「Sexual Healing」もどき=ブラコンを粗製乱造した。また、レコード会社は人件費の嵩むファンク・バンドよりも、コスパの高いブラコンに優先投資するようになり、80年代半ばにはファンク・バンドはほぼ絶滅。この流れはそのまま90年代以降も続き、途中ニュー・クラシック・ソウルとか、生演奏主体でミュージシャンシップの復権を目論む動きも有るには有ったが、それらはあくまでオルタナティヴな存在であり圧倒的少数派。今もって大多数のR&Bはプログラムされた音楽であり、マーヴィンのテンプレートは今なお効力を有している。
このアルバムがリリースされた93年頃は、ニュー・ジャックの隆盛に続き、メアリーJ以降のヒップホップ・ソウルがシーンを席巻していた頃。巷に溢れるR&Bヒットのほとんどは、打ち込みのドラムとプログラミング、それに気の利いたサンプリングを乗せて一丁上がりのインスタントR&B。個人的には、そういったメイン・ストリームのR&Bにまったく興味が持てず、70年代のファンク/ソウルとヒップホップばかりを追いかけていたのだが、ディアンジェロ以前にも僅かながら本物のミュージシャンシップの息づいたR&Bアクトは存在した。トニ・トニ・トニは88年にフォスター&マッケルロイのプロデュースでデビュー。そのデビュー・アルバムは未聴だが、アイドル・グループ的なスタンスだったようだ。トニーズの作品を初めて聴いたのは、90年の2nd『Revival』。ここで彼らはサポート・メンバーも含めてバンド・スタイルを打ち出し、アイドルからミュージシャンへと脱皮。まだまだニュー・ジャックからの影響が大きいが、生楽器による演奏もふんだんに交えたファンキーなR&Bサウンドは、数多のガイ・フォロワーと一線を画す異質な雰囲気をプンプン漂わせていて、何かやってくれそうな予感はしていた。
そして93年の3rd『Sons Of Soul』でついにバケた。ニュー・ジャックやヒップホップと上手く折り合いを付けながら、往年のソウル/ファンクの旨味を高度なミュージシャンシップでもって見事に体現。けっして懐古趣味的にはならず、90年代を生きるR&Bバンドとして理想的なアルバムをつくりあげた。ここではまだラファエルがサディーク姓に改名する前。フロントマンたるラファエルが目立ちはするが、まだドゥウェイン、ティモシーとのバランスがうまく取れていた頃の、バンドとしての最充実期を捉えた作品。本当にコレは当時聴きまくったアルバムで、90年代前半ではNo.1のR&Bアルバム。そういう人はきっと多いだろう。
南部ノリの土臭いグルーヴにラファエルの青臭いヴォーカルが乗る「If I Had No Loot」、ラガマフィンまで飛び出すニュー・ジャックを嫌味なく消化したダンサブルな「What Goes Around Comes Around」、スレイヴのマーク・アダムスばりの鋼質ベースが貫くファンク・ダンサー「My Ex-Girlfriends」、往年のモータウン・サウンドを彷彿とさせる昂揚感こみ上げるアップ「Tell Me Mama」、ザクザクしたドラム・ビートに、これまたこみ上げるメロディ・ラインがスウィートな「Leavin'」、このアタマ5曲の勢いのある流れが素晴らしい。
ドゥウェインがリードを取るムーディーなR&Bナンバー「Slow Wine」でチェンジ・オブ・ペースした後は、トロトロに蕩けるスロウ・ジャム「(Lay Your Head On My)Pillow」へ。イントロのギターの爪弾きからグッとくる、クラシック・ソウルの趣きを湛えた名曲。アーバン・メロウなグルーヴが気持ちいい「I Couldn't Keep It To Myself」、ミーターズ「Hand Clapping Song」使いのスロー・ファンク「Gangsta Groove」、スライ「Family Affair」っぽい呟きヴォーカルにメイシオ&ザ・マックス「Soul Power '74」のサンプルを合わせた「Tonyies! In The Wrong Key」、ファンキーなラガマフィン「Dance Hall」、ガシガシのドラムスがカッコいいジャズ・ファンク「Fun」と、ファンク・バンドとしての矜持を示すかのようにファンク・チューンを畳み掛ける。ラストはストリングスが壮麗に彩る長尺スロウ「Anniversary」~「Castleers」で、たっぷりとした余韻を引きずりながら幕。