high on you
High On You/Sly Stone
 Epic '75

スライがソロ名義でリリースした通算8作目のアルバム。
おそらく、世間一般ではほとんど評価されていないアルバム。だけど、これが意外とイケる。
もちろん『Stand!』『暴動』『Fresh』の革新性や凄味など求めるべくもないし、初期の作品の野心や冒険心もとっくに消え失せている。前作『Small Talk』はスライにも真っ当な人間味があることを教えてくれる愛すべき佳作だが、終始穏やかな表情を浮かべていそうなスライは、何だか丸くなってしまって、マイルス・デイヴィスをけちょんけちょんに詰ったり、ヒットマンを雇ってラリー・グラハムを暗殺しようとした(という噂)あの頃の尖がったスライはもうソコにはいなかった。じゃあこの『High On You』が尖がっているかというと、決してそんなことはないのだが、アルバムのうちの何曲かでは、『Stand!』以来のポジティヴィティ漲る快活なスライの姿を見ることができる。こんな昂揚感溢れるスライを聴けるのは結構久し振りだ。
本作には、フレディ、ヴェット、シンシア・ロビンソン、ジェリー・マルティニ、ラスティ・アレン、ビル・ローダンといった『Small Talk』時のファミリー・ストーン・メンバーも参加しているが、それ以外のミュージシャンの名前も多数クレジットされている(ドーン・シルヴァの名前もある)。『Small Talk』はシンガー・ソングライター的な作品とも言えたが、『High On You』はバンド・サウンドのダイナミズムが幾らか戻ってきている。
「I Get High On You」はゴリゴリのベースが重心低く迫る、なかなかカッコいいファンク・チューン。これほど好戦的にファイティング・ポーズを構えたスライはいつ以来だろう。更にいいのが「Crossword Puzzle」で、『Fresh』あたりのメソッドに『Small Talk』以降の新基軸であるヴァイオリンを効果的に絡めた、後期スライ随一の傑作ファンク。歪んだファズ・ベースでゴリ押しするパワー・ファンク「Who Do You Love?」、スライがオルガンを弾きまくる「Green Eyed Monster Girl」、地の底を這うような、ひたすら重いベース・ラインが黒い「Organize」、ゴリっとしたグルーヴでアッパーに攻める「Greed」など、ファンク・チューンは総じて力感に溢れていて楽しめる。
一方、非ファンク曲は、メランコリックなラヴ・ソング「That's Lovin' You」、スライらしいポップ・センスを覗かせる「Le Lo Li」「So Good To Me」、まったりぬるま湯に浸かって鼻歌を口ずさんでるような「My World」など、前作と地続きの印象もあり、悪くはないが特筆すべきものでもない。