the way i feel
The Way I Feel/Remy Shand
 Motown '01

「21世紀のマーヴィン・ゲイ」なる触れ込みでデビューしたカナダ出身の自作自演派白人アーティスト、レミー・シャンド。
マーヴィン没後、マーヴィンの名前を引き合いに語られてきた男性シンガーの多くが、そのセクシャルなイメージ、セックス・シンボルとしてのマーヴィン像を踏襲してきたに過ぎない。また、音楽的には、マーヴィンが82年に発明した「Sexual Healing」という便利なR&Bテンプレートを30年以上も使い倒してきたわけで、真に創造的だった70年代のマーヴィンの音楽に近づくことができた者はほとんどいない。70年代のマーヴィンの領域に近づいたほぼ唯一の例外と言える存在がディアンジェロだが、他にもマックスウェルなど70年代マーヴィンの音楽性にアプローチし、ある程度成功した者も僅かながら存在する。
このレミー・シャンドも、70年代マーヴィンを標榜した1人。自分で曲を書き、多くの楽器を自ら演奏して作り上げた宅録盤だが、ここで聴ける抑制されたグルーヴを内包するメロウ・ソウルは、70年代後半のマーヴィン、具体的に言えば『I Want You』あたりを誰もが連想するハズだし、他にも、カーティス・メイフィールドやアイズレー・ブラザーズなど、70年代のメロウ・ファンキーなグルーヴをうまく取り入れている。ファルセット主体で時折焼け付くような地声を混じえるヴォーカルは、マーヴィンの他にプリンスからの影響も垣間見える。
このアルバムは、マーヴィンをはじめとした70年代のメロウなソウル・ミュージックを愛情と情熱を持ってトレースしたものであり、音楽的に何か新しいことをしているわけではない。また、自作自演の限界か、時にチープに聴こえる部分もある。もちろんシンガーとしての技量はマーヴィンとは比較にならない。だが、それでも本作はなかなか健闘しているのではないか、と思う。
メロウなストリームを描くグルーヴィー・チューン「The Way I Feel」からして、あの『I Want You』の世界。歌い出しの狂おしいほどのファルセットから切なさ溢れる「Burning Bridges」、緩いワウ・ギターが浮遊し、アーニー・アイズレーばりのファズ・ギターを垂れ流すスロウ「Everlasting」、爽快にリズムが走るメロウ・グルーヴ「The Second One」、オルガンのくぐもった響きがノスタルジックな「The Colour Of Day」、リズム・ボックスが揺れるクールなメロウ・ソウル「Take A Message」、まったりと寛いだバラード「I Met Your Mercy」、気持ちよくリズムを刻むミディアム「Rocksteady」、アルバム中ではややハードな「Liberate」、スティーヴィーっぽいクラヴィネット入りの「Looking Back On Vanity」、ラストはニュー・ソウル的な「The Mind's Eye」。
結局、この1枚のみのリリースで止まってしまったレミー・シャンド。まだ音楽活動自体はやっているようなので、ぜひとも再起を期待したいところ。