america today
There's No Place Like America Today/Curtis Mayfield
 Curtom '75

ニュー・ソウル時代の最後にカーティスが放った畢竟の名盤。
派手な展開を排しストイックに磨き抜かれた楽曲、極限まで音数を削ぎ落とした隙間だらけのサウンド。ヒリヒリするようなタイトなグルーヴを繰り出すクイントン・ジョセフのドラムスとラッキー・スコットのベース。カーティスとフィル・アップチャーチ、ゲイリー・トンプソンによるギターは、1本は糸を引くように粘りつきながらリズムを刻み、もう1本は当て所なく浮遊しながら自在に絡みつく。カーティスのファルセットは切迫感に溢れながらも、冷めた諦観を感じさせる。『Superfly』のスリリングなストリングス・サウンドと勇壮なホーン・アレンジを捨て去り、徹底して抑制されたダウナーなグルーヴは、スライ『暴動』を彷彿とさせるが、スライが自己の内面と対峙していたのに対し、カーティスの眼差しは一貫して同胞へと向けられている。人種者別や社会の不条理を声高に糾弾するのではなく、ただ淡々と事実を告発するその語り口は、非常にドライで辛口。皮肉たっぷりのアルバム・タイトルとジャケットも辛辣極まる本作、カーティスのベストとの声が多いのも頷ける。
1曲目の「Billy Jack」からいきなりモノ凄い。パツンパツンにタイトなドラムス、最小限の出音でグルーヴを紡ぐベース、カーティス・サウンドの真骨頂であるウネウネとルーズに絡みつくワウ・ギター。取っ付き難さと裏腹の中毒性にヤラれるスロー・ファンク。ベイビー・ヒューイへの提供曲のセルフ・カバー「Hard Times」も、ドラムスが異様にカッコいいミディアム・ファンク。カーティスのハード・ボイルドなヴォーカルもクール。「Love To The People」は本作中では比較的ホーン・セクションの出番が多いが、哀愁を滲ます抑えたアレンジはアルバム全体のムードと共通する。メランコリックなメロディがじんわり沁みる「Blue Monday People」も素晴らしい。
これらの曲も決して聴き易い曲ではないが、更に取っ付き難いのが「When Seasons Change」。ジリジリと焦らされるようなスロー・テンポ、余白だらけのスカスカのサウンド、ほとんど展開らしい展開のない曲調に、カーティスのネチッこいファルセットが浮かび上がってくる。曲として成立するギリギリのテンポ、音数で、ディアンジェロ『Voodoo』の数曲(「The Line」「One Mo' Gin」とか)にも通じる感触がある。カーティス流ゴスペル「Jesus」も同様で、ゴスペルの昂揚感など微塵もない抑制ぶり。これらの曲は理解するのに結構時間が掛かったが、ジワジワと体に染み込み時間をかけて常習性を植え付ける凄い曲だ。
そんななか、アルバム中唯一、温かいソウルが宿るラヴ・ソング「So In Love」は珠玉の名曲。辛口な楽曲が並ぶアルバムにあって、この曲の素朴な甘さがより一層際立つ。