BLACKsummers'night/Maxwell
Sony '09
前作『Now』から実に8年ぶりにリリースされた4thアルバム。
この空白期間のあいだ、マックスウェルは音楽活動を止め9to5の仕事をしていた時期もあったらしいが、長いブランクを経てリリースされた本作は見事ヒットし高い評価を得た。本作をはじめとした3部作の構想もブチ上げていたが、既にあれから6年が経過。3部作構想はとっくに頓挫し、ここ数年は新作リリースの噂が出ては消えていく状態で、マックスウェルはまたも深い闇を彷徨っている模様。
最初の3枚の制作に深く関わったスチュワート・マシューマンが本作では不在で、プロデュースはマックスウェルとホッド・デイヴィッド。この空白期間に得た人脈を中心に録音されており、アーバンで非常に生々しいグルーヴに満たされたバンド・サウンドはこの時代にあって非常に鮮烈。『Now』も好作だったが、ややメインストリームのR&Bに傾いたように感じられたのに対し、本作は『Urban Hung Suite』をより端正にしたようなライヴ感溢れるグルーヴで個人的には好み。特にドラムスのクリス・デイヴの存在が大きく、あのタイトでグルーヴをグッと圧縮したようなドラミングは本作のキモ。
1曲目の「Badhabits」冒頭の、ファルセット~地声へ移りながら徐々に音が足されていく展開から一気に惹き込まれる。何とも魅惑的なグルーヴ、艶のあるヴォーカルが素晴らしい。「Cold」は『Urban Hung Suit』の前半を思わせるクールなファンク・ナンバー。先行リリースされヒットを記録、マックスウェル復活を強く印象付けた「Prettywings」は、マックスウェルらしいメランコリックなスロウ。「Helpsomebody」はサビに向かって増幅していくようなグルーヴがカッコいい。「Stoptheworld」はマックスウェルのファルセットが瑞々しく映える、荒涼とした雰囲気ながらも耽美的なスロウ。「Loveyou」はキーボードがエレガントなムードを演出する、疾走感のあるダンス・ナンバー。「Fistfuloftears」は熱情迸るバラード。ここでもキーボードのリフレインが曲の印象を強いものにしている。「Playingpossum」は深い哀愁が横たわるアコギ弾き語りバラード。ラストの「Phoenixrise」は、生音でサイバーなアンビエント感覚を狙った謎のインスト。正直言ってアルバムの流れからは浮いているように思うが、次の展開を期待させるような余韻を残してアルバムは終わる。
内容は素晴らしいが、不満があるとすれば全9曲で40分にも満たない尺の短さ。8年待たせてコレだけか、という感じ。結果的に、更にその後6年も音沙汰なしだなんて、その当時は思いもしなかったが。
コメント
コメント一覧 (4)
はじめまして。
ようやく出ましたねぇ。
期待と不安が入り混じってますが、これからじっくり聴き込みたいと思います。
挨拶遅れてすみません。
返信ありがとうごさいます!
文章での音の説明が好きで、いつも楽しく読ませてもらってます。
アルバムのレビューも楽しみにしてます。
こちらこそ、ありがとうございます。
好き勝手書いてる自己満ブログですが、今後ともよろしくお願いします。