introducing the hardline
Introducing The Hardline According To Terence Trent D'arby
 Columbia '87 

アメリカからドイツ経由でイギリスに渡りデビューしたテレンス・トレント・ダービー。
このデビュー作は世界的な大ヒットを記録。日本のラジオでも「If You Let Me Stay」や「Wishing Well」がよくかかっていて、個人的にはファンキーな「Wishing Well」が特にお気に入りだった。
若い黒人男性アーティストであり、狭義の黒人音楽の枠に捉われない音楽性や、天才肌のカリスマはどうしてもプリンスを連想させるし、実際にプリンスとの比較で語られることも多かった。当時絶頂期にあった殿下と並べて語りたくなるほど、このデビュー間もない新人には眩いばかりの才能の煌きがあった。本人も己の天才を確信していて、それが故にビッグマウスで度々トラブルを起こしたりも。それが原因でファンが離れたということもあったのだろうか、続く2nd『N.F.N.F.』は個人的には1st以上に好きなアルバムだが、難解な作風が世間からは受け入れられずセールスの規模は大幅に縮小、以降、改名したり、インエクセスに加入したりと迷走を続け、完全に表舞台から姿を消してしまった。
今や完全に過去の人のテレンスだが、やはりこのアルバムは素晴らしい。時代的に、今の耳には古臭く聴こえる部分もあるが、デビュー作でこれほどの作品をモノにしたというのは凄い。ひょっとしたら、今のディアンジェロのポジションに、今頃いたかもしれない人。
アルバム1曲目の「If You All Get To Heaven」はゴスペル的な重厚さが漂うスロウ。「If You Let Me Stay」はサニーなポップ・ソウル、「Wishing Well」はへヴィーなドラム・ビートがカッコいいミッド・ファンクで、プリンスの影響も感じさせる。レゲエっぽいリズム・パターンを取り入れたミディアム「I'll Never Turn My Back On You(Father's Words)」、「Dance Little Sister」はJBファンクを踏襲したカッコいいダンス・ナンバー。陰鬱なムードの「Seven More Days」、アーバンなミディアムR&B「Let's Go Forward」、「Rain」、エキゾチックな雰囲気もある艶っぽいミディアム「Sign Your Name」、一人でヴォーカルを重ねるアカペラ曲「As Yet Untitled」、ラストはスモーキー・ロビンソン&ミラクルズのカバー「Who's Lovin' You」、ありったけのソウルを込めるテレンスの激唱が素晴らしい名曲。