medicated magic
Medicated Magic/The Dirty Dozen Brass Band
 Ropeadope '02 

ニューオリンズのブラス・バンドの代表格、ダーティー・ダズン・ブラス・バンド。
数多く傑作を残している彼らだが、本作『Medicated Magic』は特に素晴らしい。
ここでは、バスドラとスネアの各プレイヤーを擁する典型的なブラス・バンド編成ではなく、ドラム・セットを叩くドラマーを起用。もちろん主役は分厚く太いノリのブラス・セクションだが、ギターやキーボードも前面に出て、更にはターンテーブル・スクラッチまでフィーチャーし、通常のバンド編成に近いスタイルになっている。そのため、祝祭的なセカンド・ラインのノリは控え目で、彼らに影響を受けた後続のジャム・バンドにより近い雰囲気になっている。その辺りが、ニューオリンズ音楽愛好家の間で本作の評価が分かれるところかもしれないが、より重心の低いファンク・グルーヴは迫力を増しており、ファンク好きとしては大満足。また、本作のレパートリーの多くはニューオリンズのスタンダード曲のカバーであり、ニューオリンズの伝統的なR&B/ソウル・ミュージックと現行ディープ・ファンク/ジャム・バンドの理想的な融合により、非常に豊穣な成果を生み出している。
1曲目の「Ain't Nothin' But A Party」はオリジナル曲で、腹の底に響くようなスーザフォンの低音が先導するグルーヴィーなファンクで、これはカッコいい。ドクター・ジョンのカバー「Walk On Gilded Splinters」は、ドクターに似たダミ声ヴォーカルのヴードゥー・ファンク。問答無用のミーターズ・クラシック「Cissy Strut」は正にジャム・バンドっぽいノリのファンクで、ゲストのロバート・ランドルフのペダル・スチール・ギターもカッコいい。アラン・トゥーサン作の「Ruler Of My Heart」は、ランドルフに加えノラ・ジョーンズがヴォーカルで参加したバラード。これもトゥーサン作の大ニューオリンズ・クラシック「Everything I Do Gon' Be Funky」は、いかにもニューオリンズなゆったりとしたノリで、ここではドクター・ジョンがリードを取る。スクラッチの入った「We Got Robbed」は現代的なビートとブラス・ファンクが結びついたオリジナル・ナンバー。オル・ダラが歌う「Junko Partner」はトラディショナルなニューオリンズR&B、アーロン・ネヴィルのカバー「Tell It Like It Is」はまったりブルージーな味わい。ミーターズ「Africa」は再びスクラッチを導入したファンクで、途中ボブ・マーリー「Get Up,Stand Up」のホーン・リフを挿入し盛り上がる。プロフェッサー・ロングヘアの演奏で知られる「Big Chief」は、楽しげに転がるピアノが印象的。
日本盤CDにはボーナス・トラック2曲追加。「Lou Mode」「Somethin' Goin' On」いずれもオリジナル曲で、前者はインスト、後者は歌モノだが、迫力あるブラス・セクション存分に楽しめる佳曲。