hey man smell my finger
Hey Man... Smell My Finger/George Clinton
 Paisley Park '93 

クリントンはヒップホップやデジタル・テクノロジーに早い段階から意識的で、ソロ転向後は自分の音楽にそれらをどう取り込んでいくかがテーマだったが、さしものクリントンもこの新しい音楽をモノにするのに手こずり、「Atomic Dog」の一発ヒットはあったものの、80年代の活動は総じて低迷していた。
90年前後になると、デ・ラ・ソウルやDr.ドレらがPファンクの曲をサンプリングしヒットを飛ばすと、70年代のPファンク再評価熱が高まり、90年代前半には無数のヒップホップ楽曲でPファンクのフレーズが聴かれるようになる。また、日本でもカサブランカ期のパーラメントのアルバムがCD化されるなど、Pファンクを取り巻く状況は好転。そういった機運の中、前作『The Cinderella Theory』に引き続きプリンスのペイズリー・パークからリリースされたのが本作『Hey Man... Smell My Finger』。これまで以上にヒップホップ的なビートや質感を携えたこのアルバム、80年代にあれだけ折り合いをつけるのに苦労したデジタル・テクノロジー/ヒップホップを、ここに来てようやくPファンクのフォーマットに上手く取り込むことに成功、クリントンのソロ作のなかでは一番出来のいいアルバムになった。
「Atomic Dog」「Let's Play House」「One Nation Under A Groove」「(Knot Just)Knee Deep」といった、自らのPファンク・クラシックスをサンプリング&弾き直した反則スレスレのアッパー・ファンク「Martial Law」、アイス・キューブ、Dr.ドレ、チャック・D、フレイヴァー・フレイヴ、ヨー・ヨーら豪華ラッパー陣が客演した「Paint The White House Black」と、頭の2曲はかなり入れ込んだ力作。クリントンのラップ/ヴォーカルも気合が漲っている。プリンスっぽさも感じる「Way Up」、トライバルなビート・ミュージックの「Dis Beat Disrupts」、スウィンギーなファンク・ラップ・チューン「Get Satisfied」、ダラス・オースティンがプロデュースに関わった「Hollywood」は、ダラスらしい音。「Rhythm And Rhyme」はハンプティー・ハンプ(ショック・G)が参加、クリントンのラップがなかなかカッコいい。プリンスとクリントンの共作「The Big Pump」は、何故かハウス。この当時のプリンスのズレっぷりを痛感させられてしまう、コレは駄曲。「If True Love」は随分可愛らしいスロウで、ベリータ・ウッズとのデュエット。縦割りのビートにPなカッティングを刻む「High In My Hello」、タイトルからしてビル・ラズウェル臭が漂うダビーなサイバー・グルーヴ「Maximumisness」、タイトなドラム・ビートの上に、ホーン・セクションとコーラスが例の哀愁メロをなぞる「Kickback」、ラストの「The Flag Was Still There」では「Flash Light」のキャットフィッシュの黄金カッティングが終始ループされる。