diamonds and pearls
Diamonds And Pearls / Prince & The New Power Generation
 Warner Bros '91 

本作からの先行シングル「Gett Off」は衝撃的だった。
ヘヴィーでダーティーなファンク・サウンド、抑揚を排したプリンスのヴォーカルがクール&ナスティーな傑作で、久々に震えたプリンス・ファンク。やや消化不良だった前作『Graffiti Bridge』のもやもやを一掃する先行シングルの出来栄えに、新作アルバムへの期待は否応無しに高まったのだが。
本作『Diamonds And Pearls』からニュー・パワー・ジェネレーションとの連名でのリリースが続くことになるが、確かにバンドっぽいサウンドになっていて、かつての密室的な雰囲気は無くなっている。ヒップホップやニュー・ジャック、ハウスなどを意識した曲作りは少し前から見られた傾向だが、そういった最先端の音楽を生のバンド・サウンドに取り込もうというのがこの時期のプリンスの志向で、バンド・メンバーに専属ラッパーを加えたのもそういった狙いだろう。音楽のトレンドや時流に流されることなく、マイペース&ハイペースで80年代を駆け抜けたプリンスも、90年代にはこの大きな潮流に乗らざるを得なかったのだろうが、結果出来上がった作品は流石に完成度は高いが、プリンスらしくない大上段に構えたパワー・ポップ・ファンクと、美麗だが毒気の抜けた薄口バラードの、80年代からのファンにとっては微妙な評価のアルバムになってしまった。付け焼き刃的なヒップホップやハウスの要素はかえってダサく、テンションは高いのに何だか締りのない感じ。ラッパーのトニー・Mも凡庸と言う他なく、この人選からしても、プリンスはよく分かっていなかったことが分かる。
まず、アルバム冒頭の「Thunder」が問題。「When Doves Cry」を解体してハウス仕様で組み立てなおしたような曲で、これははっきり言って薄っぺらいしダサい。「Daddy Pop」「Jughead」「Push」といった、ヒップホップを取り込んだアッパーなファンクは、決して悪くはないが、この手の試みはクリントンやロジャーの方が上手くやっている。バラードのタイトル曲「Diamonds And Pearls」はあまりにあっさりし過ぎてつまらない。「Batdance」以来の(そして今のところ最後の)全米No.1ヒットとなった「Cream」は、ポップだが淡白になり過ぎない仄かな官能を匂わす佳曲。ジャジーな「Strollin'」「Willing And Able」、ポップな「Walk Don't Walk」あたりはまあまあ。淡々と歌われるややダークな「Money Don't Matter 2night」は良曲。「Insatiable」は「Scandalous」タイプのビショ濡れファルセット・バラードで、「Gett Off」と並んで最も従来のプリンスらしさが出た曲。ラストの「Live 4 Love」は重いメッセージの息苦しい曲。