something to believe in
Something To Believe In / Curits Mayfield
 RSO '80 

75年の『There's No Place Like America Today』は、今ではカーティスのベスト・アルバムの1枚として名高いが、当時はセールス面で惨敗。その為か、70年代後半のカーティスは、社会派メッセージとファンク・サウンドを捨て、ラヴ・ソング主体のソフトなソウル・ミュージックへ移行。この時期もそれなりに良質な作品も多いが、フィリー詣でやディスコへの傾倒など迷走気味。そういった時代に阿るような作品もセールスの回復には繋がらなかったようで、レーベル運営も窮するようになり、遂にはカートムも閉鎖を余儀なくされてしまう。
そんな折にリリースされた本作『Something To Believe In』も、やはり緩めのソウル・アルバムではあるが、カートムという母屋は失ったものの、シカゴ回帰を感じさせる雰囲気もあり、非常に好感の持てる良作に仕上がっている。アーニー・バーンズのジャケットも粋な本作、この時期のカーティスとしては最良の作品と言える。
本作のハイライトは、何と言っても「Trippng Out」に尽きる。この絶妙なテンポで焦らすように揺れるリズム、メロウで艶っぽいグルーヴ、甘く狂おしいカーティスのファルセット、最高のメロウ・ソウルだ。アダルトなムードのディスコティーク・ソウル「Love Me,Love Me Now」、震えるファルセットが沁み入るバラード「Never Let Me Go」、温かい雰囲気のミディアム「People Never Give Up」、インプレッションズ時代の代表曲のセルフ・カバー「It's Alright」は子供コーラスを従え、途中で同じくインプレッションズの「Amen」のフレーズを挟み込む。タイトル曲「Something To Believe In」も気持ちいいテンポで揺れるミディアム・スロウ、ケニ・バークと共作/共同プロデュースした「Never Stop Loving Me」はクールなミドル・ナンバー。
現行CDのボーナス・トラック「This Year」も、爽快なメロウ・グルーヴで良い出来。