drop the line
Drop The Line / Trey Lewd
 Reprise '92 

ジョージ・クリントンの子息、トレイ・リュードことトレイシー・ルイスのソロ・アルバム。
既に70年代末頃からPファンクに帯同して活動していたようで、例の5枚連続でリリースされた未発表曲集にも、80年代前半に録音されたトレイシーの曲がいくつか収録されている。また、クリントンの89年作『The Cinderella Theory』にも関与。アルバム1曲目を飾った「Airbound」など、新世代Pファンクのフレッシュな息吹を感じさせる快作だった。
そんな、本来であればPファンクの正統後継者であるトレイシー、残念ながらリーダー作はこの1枚のみ。オーナー創業者であるクリントン親父に、今だ現場の一線を譲る気配が無いのは、不肖の息子にはPの暖簾はまだまだ任せられないということなのか。一代で伸し上った同族企業の事業承継の難しさがここにも。
親父クリントンがプロデュースし息子に帝王学を授ける本作、もちろんクリントン配下のミュージシャンが総出でバックアップし、若き2代目を盛り立てる。トレイシーのヴォーカルは親父譲りのひねくれっぷりだが、輪を掛けたフニャフニャ度は個性的ではある。サウンドの方も相当に捻じれた感じで、Pファンクとヒップホップが溶解してぐちゃぐちゃに混ざり合ったような感触は、なかなかのクセの強さ。
Pファンクの変態性にニュー・ジャックを混ぜ込んだような「I'll Be Good To You」、モホークス「The Champ」の有名なオルガン・フレーズをサンプリングした「Hoodlums Who Ride」の頭2曲は、アイス・キューブ一派のサー・ジンクスがプロデュースに関与。
単調でハードなビートで押し切る「Duck And Cover(Nuclearbuttbombbootybangbang)」、トレイシーのフニャフニャ・ラップが意外とクセになる正調Pファンクな「Yank My Doodle」、重い金属質なビートの「Rooster」、異様なヴォーカル・エフェクトが耳に憑く「Nothing Comes To A Sleeper But A Dream」、ハウス調の「Wipe Of The Week」にもしっかりP印が刻印されている。
割とストレートなラップを聴かせる「Drop The Line」、Mr.フィドラーっぽいちょっぴりジャジーな味付けの「Man Of All Seasons」、Pファンク十八番のブーツィーズ・ラバー・バンド「Under The Influence Of A Groove」の哀愁フレーズ入りの「The Next Thing You Know(We'll Be)」、ラストの「Squeeze Toy」はルーズに垂れ流すスロー・ナンバー。
トレイシーは以降のオール・スターズ作品でも、数は多くないものの更に個性に磨きがかかった楽曲を制作している。2005年の『How Late Do U Have 2BB4UR Absent?』収録の「Su,Su,Su」とか、個人的にはかなり好きな曲で、トレイシーがしっかり進化を遂げているのが分かる。今リーダー作を作ったら、ちょっと凄いものが出来るんじゃないかと思うのだが。