adriana evans
Adriana Evans
 Loud '97 

90年代後半のニュー・クラシック・ソウル隆盛時には、エリカ・バドゥをはじめ女性シンガーも数多く登場したが、そのなかでも当時1番のお気に入りだったのがエイドリアナ・エヴァンスの1stアルバム。
とにかく聴いていて心地良いアルバム。その理由は、生音のふくよかなメロウネスと、ヒップホップを通過したビート感が理想的なバランスで共存していること。聴き手によって”理想的なバランス”はそれぞれ違うだろうが、バドゥよりもソウル寄り、マックスウェルよりも70's的な本作が個人的にはツボだった。
70年代的と言っても、決して古臭く聴こえないセンスの良さは、本作のプロデューサーである夫のドレッド・スコットの手腕に拠るところだろうか(スコットが94年にリリースしたソロ作『Breakin' Combs』も、ジャジーでオーガニックな風合いのヒップホップ・アルバムだった)。
また、エイドリアナの柔らかなヴォーカルも素晴らしく、サウンドとの相性はバッチリ。本作以降も、2人でマイペースな活動を続けているが、見事に時代のムードと噛み合った本作がベスト。

曲によって、ヒップホップ濃度の強弱に違いがあり、ソウル・サイドの曲とヒップホップ寄りの曲がほぼ交互に並べられていて、聴き手を飽きさせない。
オープナーの「Love Is All Around」は、タイロン・デイヴィス「In The Mood」を踏襲したかのようなムードで、柔らかいソウルフルな生音グルーヴと澄み渡るようなエイドリアナのヴォーカルが広がっていく。「Seein' Is Believing」はジャジーなヒップホップ寄りのトラックで、ロイ・エアーズ「Mystic Voyage」、リック・ジェイムス「Mary Jane」をサンプリング。「Heaven」は70'sムード横溢のメロウなスロウ・ナンバーで、キャメオ「Sparkle」を思わせるホーン・アレンジにもニヤリとさせられる。

「Reality」はヴィブラフォンの響きが気持ちいいジャジーなR&Bナンバー。「Hey Brother」はエイドリアナとスコットのユニゾンのハモリがキャッチーな、本作中最もヒップホップ色の濃い曲で、ビートは尖っているが口当たりは滑らか。「Trippin'」は涼やかなアコースティック・ギターと枯れたパーカッションを円やかなホーンが包む、ミニー・リパートンを思わせるようなメロウ・ソウル。

「I'll Be There」はエイドリアナがソウルフルに歌い上げる美しいピアノ・バラード。「Love Me」もビート強めのヒップホップ・ソウルだが、フルートやヴァイブ、ミュート・トランペットのサンプルがジャジーでメロウなグルーヴを醸成している。「Looking For Your Love」はどこかシカゴ・ソウルのテイストを匂わせる、まったり寛いだミディアム・ソウル。

「Swimming」は、タイトルから受ける印象そのままの、爽快で幻惑的なグルーヴが気持ちいいヒップホップR&B。「Say You Won't」はムーディーなミディアム・スロウで、夜のしじまに溶け込みそうなメロウネスが堪らない。ラストの「In The Sun」は、ブラック・ヒート「Zimba Ku」をサンプリングしたグルーヴ・チューン。