talk to the people
Talk To The People / Les McCann
 Atlantic '72 

レス・マッキャンはとにかくリリース数が多く、とてもそのキャリアを追いきれたものではない。自分は60年代末から70年前半の作品(の一部)しか聴けていないが、この時代のアルバムにはニュー・ソウル的なムードが充満していて個人的には非常に好み。
72年リリースの本作『Talk To The People』も、ジャズ・ファンクとニュー・ソウルの美味しいトコが溶け合ったような、そんな1枚。以前にレヴューした『Layers』なんかもそうだが、本作もマッキャンの弾くエレピが全般にわたって敷き詰められているような作品で、まったりメロウ、レイジーでユルい音とグルーヴにすっかり気持ちよくなってしまう。また、クラヴィネット含有量も大きく、クラヴィ・フェチとしては絶好のオカズだ。
大半の曲でマッキャンが歌っているが、上手くはないものの苦みばしったド渋なヴォーカルは不思議とこのサウンドとの相性がイイ。

アルバムの冒頭を飾るのはマーヴィン・ゲイ「What's Going On」のカバー。霞がかったエレピが神秘的に響くメロウでスモーキーなサウンドに、オヤジの鼻歌のようなマッキャンの朗々としたヴォーカルが乗るメロウ・ジャズ・ファンクで、コレは堪らない気持ちよさ。
「Shamading」はエレピがグルーヴィーに走るインスト・ジャズ・ファンクで、曲後半にはクラヴィネットがビキビキと分け入ってくる。スティーヴィー・ワンダー「Seems So Long」のカバーは原曲の幻想的なムードを踏襲、ユルユルに揺れるエレピに蕩けてしまいそう。「She's Here」もジャジー・メロウなインストで、脱力感でメロメロにされる。

「North Carolina」は冒頭からドラム・ブレイクがガシッとキマり、全編にわたってクラヴィネットがザクザクと刻むジャズ・ファンク・チューン。「Let It Lay」はやや泥臭味もあるアーシーなジャズ・ファンク。
そしてラストのアルバム・タイトル曲「Talk To The People」。もう初っ端のメロウなエレピが滑り込んでくるあたりで、 条件反射的にピート・ロック&C.L.スムース「Anger In The Nation」が脳内再生されること必至の、黄金色に輝くメロウ・ジャズ・ファンクの逸品。