be thankful for what you got
Be Thankful For What You Got / William Devaughn
 Roxbury '74 

ウィリアム・ディヴォーンの名前を初めて知ったのは、マッシヴ・アタックの『Blue Lines』に収録されていた「Be Thankful For What You Got」のカバーを聴いた時だった。この曲をタイトルとするディヴォーンの74年のアルバムがレア・グルーヴ方面で高い人気を誇ることを知ったのは、それからしばらく後になってから。
ディヴォーンはワシントンDC出身のシンガー。自主制作ながらフィラデルフィアのシグマで録音、ジョン・デイヴィスのプロデュース、アール・ヤング、ノーマン・ハリス、ボビー・イーライ、ヴィンス・モンタナ、ラリー・ワシントンら、錚々たるMFSBのミュージシャンを起用したこのアルバム。『What's Going On』の影響下にあるニュー・ソウル・テイストの作品で、ここでのメロウでシルキーなサウンドは、典型的なフィリー・ソウルとは趣を異にする。華麗なストリングスよりもドラムやパーカッションのリズムが前に出た魔法のグルーヴは、曲によってはハイ・サウンドっぽさを感じさせたリもする。
ディヴォーンのどこか頼りなげな甘いテナーは、カーティス・メイフィールドを思わせる。決して上手い歌手ではないが、温かみのあるハートフルな歌とメロウ・ソウル・サウンドはうまくマッチしている。
タイトル曲「Be Thankful For What You Got」がやはり本作を象徴する名曲だが、他の曲も概ね同路線で固められており、オープニング・ナンバーのヴィブラフォンの音色が蕩ける極上のメロウ・グルーヴ「Give The Little Man A Great Big Hand」からもう堪らない心地よさ。メロウなゴスペル・スロウ「We Are His Children」、タイトルや曲調からスライ「Family Affair」を連想させたりもするミディアム・グルーヴ「Blood Is Thicker Than Water」、柔らかなスロウの「Kiss And Make Up」「Sing A Love Song」、軽やかなミディアム「You Can Do It」、フルートが囀る「Something's Being Done」と、全曲がメロウに輝く傑作。
CD再発時のボーナス・トラック「You Gave Me A Brand New Start」は軽快なフィリー・ダンサーで、これも良曲。