slaughters big rip off
Slaughter's Big Rip-Off / James Brown
 Polydor '73 

70年代前半のJBは、ニュー・ソウルやブラックスプロイテーション映画の興隆から刺激を受け、メッセージ性の強い大作志向の2枚組アルバムを連発する他、サントラ盤も2枚制作。本作はそのうちの1枚『Slaughter's Big Rip-Off』。
インスト曲も多く含むあたりはサントラらしいつくりで、JBのソロ名義ではあるが、JB's楽曲からの流用やリン・コリンズがヴォーカルを取る曲もあったりと、JBファミリー総出でバックアップ。全曲JBのプロデュースとなっているが、実質制作を取り仕切ったのはフレッド・ウェズリー(と一部デイヴ・マシューズ)で、フレッドの手腕が光る好サントラ盤に仕上がっている。
出だしの不穏なストリングスが緊張感を高める「Slaughter Theme」で幕開け。ファンキーな曲だが、途中一瞬メロウに展開するパートでは、デイヴィッド・T・ウォーカーの黄金フレーズが聴ける。サントラ然としたファンキーなチェイス系インスト「Tryin' To Get Over」、後にJB's『Hustle With Speed』にも収録された、ダークに蠢くジャズ・ファンク・インスト「Transmograpfication」、JB's「Gimme Some More」をテンポアップしコンガを効かせた「Happy For The Poor」、粘っこいグルーヴにJBのシャウトが乗る「Brother Rap」は、『Sex Machine』収録の疑似ライヴ・バージョンを編集したもののよう。ブルージーなインスト「Big Strong」や、意表を突くラテン・ナンバー「Really,Really,Really」なんかはサントラならではといった趣き。
「Money Won't Change You」をアップデートしたファンキー・ソウル「Sexy,Sexy,Sexy」、「To My Brother」はJB's『Food For Thoght』にも収録された、いかにもサントラっぽいスリリングに疾走するジャズ・ファンク・チューンだが、ここでのバージョンは更にアレンジが加えられている。リン・コリンズが歌うバラード「How Long Can I Keep It Up」は地味だが名曲。本作最大の目玉となる「People Get Up And Drive Your Funky Soul」はJBの気合いも漲るミッド・ファンク・チューンだが、この曲は『Motherlode』収録の9分に及ぶロング・バージョンが決定打。路地裏感が滲み出るインスト「King Slaughter」、ラストの「Straight Ahead」は、JBのもう1枚のサントラ『Black Caesar』収録の「Sportin' Life」みたいな軽やかなフュージョン曲。