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Hit N Run Phase Two / Prince
 NPG '15 

2015年に、『Hit N Run Phase One』から僅か3ヵ月後に配信リリースされた『Phase Two』。
ようやくCDリリースされたものの、ほとんど流通していないようで、アマゾンでも取り扱いが無い状態で、しかたなく海外から取り寄せた次第。
『Phase One』はEDMに大きく傾倒したサウンドに戸惑った。チャレンジングな姿勢は評価に値するものの、正直言えばほとんど聴いていない。やはり熱心なファンからの評判は芳しくなかったようで、だからと言うわけではないだろうが、『Phase Two』ではEDM色を一掃。まさにオールド・ファンが求める、安心して聴けるプリンス・サウンドで埋め尽くされた快作。
それもそのはず、『Art Offcial Age』『Phase One』の共同プロデューサー、ジョシュア・ウェルトンのクレジットが本作には、ない。EDM路線を主導していたと思しきジョシュアが排除(?)されたことで、プリンス王道路線に回帰したということか。また、サード・アイ・ガールのメンバーも、クレジットされているのはベースのイダ・ニールセンだけとなっている。ドラムスは安心のジョン・ブラックウェルだ。
アルバムは、ここ数年の間に散発的に発表された楽曲を中心に、新曲も加えてまとめた、謂わば寄せ集め的な作品だが、とてもそんな風には思えない見事な統一感、まとまった流れがある。個人的にはこういった散発的に発表された楽曲はほとんどチェック出来ていないので、こうしてアルバム1枚に纏めてもらえると非常に有り難い。個々の楽曲の完成度の高さは言わずもがな。ここには実験や冒険は無いが、成熟した極めて良質なポップ・ミュージックを堪能することができる。
アルバム冒頭の2曲、フレディ・グレイ事件を受けて2015年に急遽発表した「Baltimore」と、2012年にシングル・リリースした「Rocknroll Loveaffair」は、いずれもポジティヴなポップ・ロック・ナンバーで、とにかく曲の良さが際立っている。「2 Y.2 D」はファンキーなミドル。シンプルだがグルーヴ感たっぷりのバンド・サウンド、ファンクなホーン・セクションが良い。
「Look At Me,Look At U」はレイド・バックしたグルーヴィー・ミディアム。ほんのりジャジーでメロウな肌触りが堪らなく気持ちいい。「Stare」はタイトなベースを軸にグルーヴするクールなファンク・チューン。途中挿入される「Kiss」のギター・リフ、「Sexy Dancer」のハァハァ・ヴォーカルにニヤリとさせられる。
2011年のシングル「Xtraloveable」はアーバンなファンク・ダンサー。ジャジーでファンキーで煌びやかなホーン・アレンジがイカす。「Groovy Potential」は地味ながらも味わい深い良曲。殿下の艶やかなファルセットが映えるスロウ「When She Comes」、2013年の「Screwdriver」は疾走するロックンロールで、やはりこの手の曲はサマになる。
「Black Muse」はポップに弾むミッド・グルーヴ。曲後半のアイディア豊かな展開は流石と言うしかない。「Revelation」はミスティックなファルセット・バラード、ラストの「Big City」は賑やかなパーティー・ファンク。ここ十数年ほどのアルバムでは定番となった、ラストはファンクで大団円パターンだが、やはりコレは盛り上がる。
今後の『Hit N Run』シリーズの展開、そしてジョシュアとのリレーションシップがどうなっていくのか、非常に気になるところだ。