live at the beverly theater
Live At The Beverly Theater In Hollywood / P-Funk All-Stars
 Westbound '90 

カサブランカ、ワーナーの両レーベルとのゴタゴタや、バーニーをはじめカネで揉めたメンバーの流出もあり、急激に弱体化していった80年代初期のPファンク帝国。果ては国税にまで追われる身となったクリントンは、経済的にバンドの維持が困難となり、ついに一派離散を残るメンバーに一方的に通告。かくしてパーラメント=ファンカデリックは後味の悪い最期となった。
だが、転んでもタダでは起きないのがクリントン、潜った修羅場の数が違うというか、このドン詰まりの状況で起死回生の「Atomic Dog」の一発特大ヒットで一気に形勢挽回。その余勢をかって、昔の仲間達も呼び寄せバンドを再編、ツアーに打って出た。
本作は、83年のツアーの模様を収めた2CDライヴ盤。その当時はリリースされるに至らなかったが、90年になってPファンク再評価の流れでようやく日の目を見たもの。アース・ツアーの、あの何か得体のしれないものが蠢いているような異様な迫力は求め得ないが、ここではより練られたアレンジで完成度の高いファンク・ショウを聴かせてくれる。
メンバーでは、何しろバーニーが戻って来ているのが大きい。キーボードはもう一人、ジェローム・ロジャース。ドラムスはデニス・チェンバース、ベースはスキート、ギターはハンプトン、エディ、ブラックバード、ブギー、ゲイリーの5人が揃い踏み。ホーン・セクションはボルティモア・コネクションの3人で、メイシオはほぼMCに専念。ヴォーカル陣はクリントンの他、マッドボーン、ライジ・カリー、ロン・フォード、ピーナット、クリップがクレジットされている。
幕開けは「P-Funk(Wants To Get Funked Up)」。バーニーのキーボード・ソロ独演に聴衆がハンド・クラップとコーラスで応える、何かが始まる感にゾクゾク身震いするようなオープニング。そこからドラムスとベース、メイシオのMCが入ってきて「Do That Stuff」へ。メイシオのメンバー紹介とともに徐々に音が足され、やがて分厚いグルーヴのウネりへと昇華されていく構成が見事。それにしてもモノ凄い完成度、もはやどこが「Do That Stuff」なのか分からないぐらい凝ったアレンジと展開、そして比類なきへヴィー・ファンクネス。最高だ。
ライヴ定番の「Cosmic Slop」は、ギターが何本あるか分からないくらいグチャグチャと絡み合って凄いことになっている。4曲目の「Let's Take It To The Stage」から始まるメドレーで、ようやく御大登場。 Go-Goっぽいリズムに乗ってアジるクリントンは、やっぱり超ファンキー。「Give Up The Funk」は切れ味鋭いキレッキレの演奏、後半は例によって「Night Of The Thumpasorus Peoples」へと繋がっていく。タイトなグルーヴを繰り出す「(Not Just)Knee Deep」は、終盤ブーツィーズ・ラバー・バンド「Rubber Duckie」から最後はブライズ「Disco To Go」のブレイクでシメ。
ディスク2は「Maggot Brain」からスタート。バーニーのキーボードとメイシオのフルートをバックにクリントンが語りを入れる意表を突いた8分にも及ぶジャジーな導入部の後、ようやく聴きなれたあのギターが入ってくる。「One Nation Under A Groove」は後半フュージョンっぽく展開するが、強靭なグルーヴは最後まで持続。「Atomic Dog」は強力にバウンスするビートが凄まじいへヴィー・ファンク。オーラスは随分早いテンポの「Flash Light」で駆け抜けるように大団円を迎える。