hell
Hell / James Brown
 Polydor '74 

『Get On The Good Foot』『The Payback』と、大作志向の2枚組アルバムを連発した70年代前半のJB。
本作『Hell』も懲りずに2枚組。だが、単調でやや水増し感のあった先の2作と比べると、本作は展開に起伏があり飽きさせないつくりの好盤。アルバム・タイトルやジャケットからも窺えるメッセージ性、イノヴェイターとしての役割を終えてもなお、貫禄十分の黒く太いファンクネスを見せつける。クール&ザ・ギャング「Jungle Boogie」を意識したかのような、曲間に頻繁に挿入される銅鑼の音はご愛嬌。
アルバムの白眉は、最後に収録された「Papa Don't Take No Mess」。ジワジワとルーズにグルーヴする14分にも及ぶ長尺ミッド・ファンク・ジャムで、個人的には非常に好きな曲。この曲に次ぐのが往年の名ファンクの焼き直し「I Can't Stand It "76"」。コレが意外にもタイトな仕上がりで、黒光りする太いファンク・グルーヴはかなりカッコいい。しかし74年なのに何故"76"なのかは不明。
この2曲には及ばないものの、「Cold Blooded」「Hell」「My Thang」あたりは、小粒ではあるが小気味良いファンクでなかなかイイ。ラテン・ファンクの「Sayin' And Doin' It」なんかも結構好き。「Please,Please,Please」のリメイクもラテン調で、この頃のJBはラテンに傾倒していたのだろうか。グルーヴィーな「Stormy Monday」、ファンカデリック「Nappy Dugout」調のミッド・ファンク「Don't Tell A Lie About Me And I Won't Tell The Truth On You」といった変化球も、2枚組の長丁場をダレずに聴かせるには必要。「A Man Has To Go Back To The Crossroad Before He Finds Himself」「Sometime」といった小ざっぱりしたバラード、メロウ・グルーヴに改変した「Lost Someone」の再演も、アルバムの中でいいアクセントになっている。