gold experience
The Gold Experience / The Artist Formerly Known As Prince
 NPG '95 

94年の『Come』でプリンスの名を封印。例の音読不能のシンボル・マークに改名後、初のアルバムとなったのが本作『The Gold Experience』。『Come』のダークで密室的なファンク・サウンドと聴き比べれば一聴瞭然、本作は殿下の典型的な90年代前半の音、ヒップホップやハウスを取り込んだパワー・ポップ・ファンクなNPGサウンドを更に推し進めた内容で、開放感溢れるポジティヴな雰囲気が充満している。『Come』とは対照的過ぎる眩いジャケットやアルバム・タイトルも、殿下のそうした気分を映し出している。翌年にはマイテと結婚する殿下、プライヴェートにおける好調ぶりも相俟って、シンボル・マークとしての再出発となったこの時期の気合いの漲りようが窺える。
ただ個人的には、90年代後半、つまり95年の本作から99年の『Rave Un2 The Joy Fantastic』までの改名期の作品群は、殿下に対する関心が最も薄くなっていた頃で、一応新譜が出ればチェックはするものの、『Crystal Ball』を除けばそれほど深く聴き込むこともなかった。力感漲る本作が、また新しいファンを掴み、高く評価する向きも多いということは理解はできるが、やはりかつての殿下らしさ、アクの強さというものが希薄な印象は否めない。今改めて本作を聴き返しても、そのような印象に特段変わりはないが、やはりこのポップ・ミュージックとしての圧倒的な完成度の高さは、殿下にしか為し得ないものだと今更ながら感じ入ってしまった。
頭のネジが飛んだようなイカレたファンキー・チューン「P Control」、某格闘技中継でお馴染みとなった超アッパーなファンキー・ポップ・ロック・ナンバー「Endorphinmachine」と、アルバムは初っ端からハイ・テンションで勢いよくカッ飛ばす。エモーショナルなロッカ・バラード「Shhh」、ヒップホップ経由のへヴィーなビートのミドル「We March」、多幸感溢れる清廉なバラード「The Most Beautiful Girl In The World」、陽性のポップ・ロック・チューン「Dolphin」、典型的NPGタイプのパワー・ポップ・ファンク「Now」、プリンスらしいエキセントリックなファンク・ロック・ナンバー「319」、渋いカッティングをキメる「Shy」、80年代前半の作風が一瞬甦る強力なファンク・トラックの「Billy Jack Bitch」、ドラマティックなファルセット・バラード「I Hate U」、これも某K-1中継のエンディングに使われていた、大上段に構えた「Gold」と、まさに黄金に輝く殿下の才能が広く開かれた作品。