※別ブログの過去記事の再掲載です。


ブラック・ミュージック・ラヴァーのバイブルと言ったら、コレ。
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『U.S. Black Disc Guide』 鈴木啓志・編

左が91年の初版、右が初版発行以降にリリースされた作品を追加した94年発行の増補版。
ソウル・ミュージック評論の重鎮、鈴木啓志さん責任編集の大作で、94年版には959枚ものアルバムのレヴューが掲載されている、ブラック・ミュージックのディスク・ガイド本の決定版。

この本を購入したのは、大学1年の時だから92年。もちろん左の初版本。革新ファンクの系譜を辿り、プリンスからPファンク、スライと遡り、JBの膨大な作品数に圧倒されていた頃。当時はまだインターネットが普及する遥か前、次に何を聴いたらいいのか、まったく情報がなかった時代に出会った福音。コレよりちょっと前に、やはり鈴木啓志さんの本『R&B、ソウルの世界』を読んで、ソウル・ミュージックの大まかな歴史観や全体像を掴むのに大変役立ったが、決定的に黒人音楽の泥沼に引き摺り込まれることになったのは、やはりこの『U.S. Black Disc Guide』を読んでからだ。年代ごとに、ファンク、ソロ・シンガー、ヴォーカル・グループ、サザン/ディープなど分類して章立てされ、基本1アーティストにつき1枚、主要アーティストに関しては詳細なディスコグラフィとその簡単な解説もついて、ディスク・ガイドでありながら60年代以降の黒人音楽の流れを体系的に理解することができるという親切設計。

とにかく情報に飢えていた当時、この本をボロボロになるまで何度も何度も読み返し、興味のあるアルバムを片っ端から聴き漁った。当時はまだソウル系のCD再発はそれほど盛んではなく、手に入らないアルバムも多かったのだけれど、CDで入手可能なものは食費を切り詰め買いまくった。そのうちレコードを集めるようになると更に拍車がかかり、もう止まらない。初版本はボロボロになった挙句、多分大学の構内のどこかに置き忘れて失くしてしまったが、その頃には出ていた増補版をすぐ買い直し、これも読みまくってすぐにボロボロに。

今でも確認したいことがある度に読み返すこの本だが、掲載に値する十分なクオリティを持ちながらも、編集方針で意図的に外された有名盤も結構あったりする。また92年以降、ヒップホップやレア・グルーヴの流れを経て評価が確立され、現在では傑作として認識されているアルバムの中には、そもそもこの本が編まれた時点ではまったく知られていないものや、当時は聴くに値しない駄作として扱われていたアルバムもあり、当然ながらそういった作品は漏れている。まぁ、時代時代で音楽の聴き方が変わり、評価も違ってくるのは当然だし仕方のないこと。むしろ、この本に掲載されたアルバムは、そういった時代性に左右されないブラック・ミュージックのスタンダードばかりであり、黒人音楽の泥沼へと誘うガイド役としては、これほど打ってつけの本もないだろう。まずはここで紹介されている作品を足掛かりに、興味の趣くままに更なる深淵に足を踏み入れて行けば、もう引き返すことはできない。

で、揚げ足を取るワケじゃないけど、何故か選から漏れた傑作を思いつくままに挙げると、

awb
Average White Band

「何故か入っていない名ファンク・バンド」の筆頭はこの人たちでしょう。
多分、純白人バンドだというのが選から漏れた理由と思われ。たしかに、歌は弱いし白いので、落選したのも仕方ないのかも。










first taste of sin
First Taste Of Sin / Cold Blood

ベイエリア・ファンクの名バンド、コールド・ブラッドもAWB同様に落選。
こちらのリード・シンガーは実力は十分でも、シャウト系の白い歌で、やはりソウルフルではない。










in the right place
In The Right Place / Dr. John

このニュー・オリンズ・ファンクの名盤も入っていない。
お世辞にもソウルフルとは言えない、ドクターのアクの強いダミ声は、ソウル耳にはハードル高いということか。
こうしてみると、ウマいorヘタというよりも、歌にソウル的な旨みがあるかどうかが、当落の分かれ目なのかも。









southern nights
Southern Nights / Allen Toussaint

ニューオリンズ音楽界の名プロデューサー/作曲家のトゥーさんの、この名作も入っていない。
黒人でも、歌が上手くなくソウルフルでなければ落選ということか。










wild magnolias
The Wild Magnolias

コレが入ってないのは何でだろう。
泣く子も踊るニューオリンズ・ファンクの鬼傑作。
まぁ、歌はほとんどチャントと言うか、お囃子的なコール&レスポンスだけなんだけど。
ニューオリンズものは名盤が結構落ちている。









betty davis
Betty Davis

姐さんの地獄のヘヴィー・ファンク・アルバム。
このドスの効いたガナリ声ではやはり落選。












think
Think(About It) / Lyn Collins

この落選は意外かも。
歌は特別上手いワケではないけど、ソウルフルな旨みをしっかりと味わえるし、アルバムの出来も良いのに。
マーヴァ・ホイットニーは入ってるのに。










funky nassau
Funky Nassau / The Beginning Of The End

コレも意外な落選。
レア・グルーヴ以降に評価が高まったのは分かるけど、レア・グルーヴ云々抜きにしてファンク名盤だと思うが。
シングルが大ヒットしてるのだから、日本で知られていなかったということもないだろう。
サー・ジョー・クォーターマンとか、マーヴィン・ホームズとか、もっとマイナーなヤツも入ってるのに。