donny hathaway
Donny Hathaway
 Atco '71 

ダニーの3枚のスタジオ録音作のうち、2ndアルバムとなる本作は最も地味な印象を受ける。
全9曲中、自作曲は1曲のみで、バラード中心のアルバムであるということも、そういった印象に繋がっているのだろう。だがそういったアルバムの性格ゆえに、カバー曲や外部発注曲でも見事に自己の内省的な表現へと落とし込むソウルフルな歌唱や、ゴスペル/ジャズ/クラシックの素養で練り上げるアレンジャーとしての才を、如実に知らしめる名盤であると思う。
アルバムの1曲目「Giving Up」がまず素晴らしい。内省的でありながら堪らなくエモーショナルなヴォーカル、感情の起伏を伝えるアレンジメント、ダニーの心の痛みが、聴き手に刻み付けられるかのよう。レオン・ラッセルの名曲「A Song For You」も完全にダニーの曲になっていて、ソウルフルな歌と、ジャズやクラシックが薫る素晴らしいアレンジが、この曲をオリジナルよりも一段上の高みに引き上げている。ビリー・プレストンの「Little Girl」や、「He Ain't Heavy He's My Brother」は、ゴスペルの熱い昂りに震える。
「Magnificent Sanctuary Band」は、アルバム中唯一リズムのついた曲だが、これもゴスペルっぽくクワイアを従えて、足を踏み鳴らし聴き手を鼓舞する。「She Is My Lady」はドラマティックなバラードで、作者はジョージ・クリントンとなっているが、あの人とは別人だろう。「I Believe In Music」はハートフルな温かい曲。自作曲の「Take A Love Song」は静謐でウォームなラヴ・バラード。最後の「Put Your Hand In The Hand」もゴスペル的なミディアム・スロウ。