time
The Time
 Warner Bros. '81 

80年の『Dirty Mind』で、タダモノではないことを一部好事家に知らしめたプリンス。もうすでにこの頃から、溢れ出れる創作力を抑え込むことができず、湯水のように湧いてくるアイディアを次々に曲としてカタチにしていったが、とても年1枚のアルバム・リリースだけではアウトプットが足りない。そこで考えたのが、自分の楽曲を演奏するバンドをプロデュースし世に送り出すということ。目を付けたのが、地元ミネアポリスで活動していたバンド、フライト・タイム。このバンドを母体に、旧友モーリス・デイらを加えて編成したのがザ・タイムで、その成り立ちから既にプリンスの傀儡バンドであることを宿命づけられていた。
後にプロデューサーとして大成するジミー・ジャム&テリー・ルイス、スライやディアンジェロらとも絡んだジェジー・ジョンソンなど、実力者を揃えたバンドでありながら、本作は(これ以降も)、作曲・アレンジ・演奏にいたるまでほぼすべてをプリンス1人で行っている。プロデュースはモーリス・デイとジェイミー・スター(プリンスの変名)だが、実際にはプリンス1人で作ったトラックに、モーリスはヴォーカルを入れただけとのこと。
本作で聴かれるサウンドは、やはり『Dirty Mind』に近い印象で、チープで粘着質なシンセが纏わりつく初期ミネアポリス・サウンドだが、プリンスのソロ作品よりもストレートなファンク/ブラック・ミュージック色が濃くなっているのが特徴。モーリスのヴォーカルは、まだ後のナンパなジゴロ・キャラは確立されておらず、割とマジメに歌っている。
アルバムはやはり、殿下臭がプンプン臭うファンク・ナンバーが良く、「Get It Up」は「Head」を更にへヴィーにしたようなミネアポリス・ミッド・ファンクで、バック・ヴォーカルには殿下の声も聴こえる。「Cool」は「Party Up」的なアップ・テンポのファンク・ダンサーで、十八番のフレーズ”What Time Is It?”も飛び出す。「The Stick」はツボを押さえたギター・カッティングがカッコいいクールなファンク・トラック。
バラードでは、純なスロウの「Girl」、官能滴る「Oh,Baby」と、プリンス以上にブラック・フィーリング濃厚。残る「After Hi School」は、「Dirty Mind」「When You're Mine」路線の青春エレクトロ・ポップ。