hot buttered soul
Hot Buttered Soul / Isaac Hayes
 Enterprise '69 

「Hold On,I'm Comin'」「Soul Man」など、デイヴィッド・ポーターとのコンビで多くの名曲を生み、作曲家として60年代スタックス黄金期の屋台骨を支えたアイザック・ヘイズ。
オーティスの不慮の死後、アトランティックから見切りをつけられ配給契約を打ち切られたスタックスを立て直すべく、本来裏方のヘイズがソロ・アーティストとしてデビュー。その1st『Presenting Isaac Hayes』は未聴だが、商業的には失敗。しかし、2ndとなる本作『Hot Buttered Soul』は大ヒットを記録。
本作はプレ・ニュー・ソウルの重要作。アルバムは全4曲で、うち2曲は10分超の大曲、一番短い曲でも5分超と、シングル需要中心のR&B界の不文律であった、ラジオ・フレンドリーな3分間ポップスの呪縛を打ち破る野心的な構成。バーケイズのファンキーな演奏と豪奢なストリングスを大胆にミックスしたシンフォニック・ソウルは、カーティス・メイフィールドの1stやマーヴィン・ゲイ『What's Going On』に先駆けていた。ヘイズの物憂げな低音ヴォイスは、お世辞にも上手いとは言えないが、自身の声をセクシュアルに響かせる術をヘイズは心得ている。
「Walk On By」はバカラック・ナンバーを大胆に解釈した12分に及ぶプログレッシヴ・ソウルで、ヘイズの代表曲のひとつ。「Hyperbolicsyllabicsesquedalymistic」はサイケデリックな臭いもあるグルーヴィーなファンクで、単語数珠つなぎタイトルもPファンクに先んじていた。ムーディーでドラマティックなバラード「One Woman」、そして「By The Time I Get To Phoenix」は、導入部の長い語りから8分を超えてようやく歌に入る、19分弱の一大叙情ソウル。