日本語で読めるファンク研究書としては、おそらく唯一にして至高の一冊。
funk
『ファンク 人物、歴史そしてワンネス』
リッキー・ヴィンセント 著
宇井千史 訳

著者のリッキー・ヴィンセントは、カリフォルニアの大学のラジオ局で『The History Of Funk』というプログラムのDJとして、ファンクを学生や地元の人たちに布教していたという人物。ファンクの語り部として番組を続けるうちに、黒人社会・文化とファンクの関わりとその歴史を学術論文として纏めることを着想し、大学教授に師事しながら完成させたのが本書。

ここでは、ファンクの直接の起源を65年のJB「Papa's Got A Brand New Bag」とし、更にそれ以前のジャズ、ブルース、ゴスペルの時代から、90年代前半のヒップホップまでをカバーしているが、話の中心は70年代のファンク興隆期。70年代のファンク・バンドの栄枯盛衰を、王朝の興亡になぞらえているのが本書の特徴で、こういう部分にアカデミックな匂いを感じたりもするが、それ以上に、こういうセンスはPファンク的だなぁと思う。
ファンクの歴史観・大局観を掴みつつ、マニアックな分析を随所に折り込んでくる。ここで述べられるファンク史観においても、その中心となるのが、JB、スライ、Pファンクという、いわゆる革新ファンクの系譜で、この1本のラインが革新でありファンクの王道であるという事実が浮かび上がってくる(プリンスに関する記述は少ないが)。
それから、ディスコ・ミュージックに関して徹底的にケチョンケチョンに貶されていて、そういうファンク原理主義的な部分には激しく共感してしまう。

それにしても、この著者のPファンクへの入れ込み様、熱量は凄まじく、Pファンクだけで独立して章立てされており、70年代後半=Pファンク王朝と命名してしまうほど。Pファンクを別格扱いしているのは一読瞭然で、御大クリントン自ら本書に序文を寄せていたりもする。Pファンク研究においては、日本が世界に誇る河地依子さんの『P-Funk』があるが、『P-Funk』が出るまでは本書が(日本語で読めるものとしては)最も(と言うか唯一)Pファンクの精神性に迫った本だと思う。

ricky vincent
著者のリッキー・ヴィンセント。クリントンとの2ショット。右手はしっかりファンク・サイン。

ricky vincent bootsy
こちらはブーツィーと。ブーツィーの右手にもファンク・サインが。

全500ページ、厚さ4cmの労作で、これからファンクを聴こうという初心者向けではないように思うが、ファンク好きなら面白く読めることは間違いない。本書の翻訳本は98年初版で、出てすぐに購入し何度も読み込み、今でも時々読み返しているが、今になってようやく理解できることもあったりして、長く愛読できるファンクのバイブルとして後世に伝えていきたい本だ。


そして、こちらはもうすぐ。楽しみ!
clinton
『Brothas Be, Yo Like George, Ain't That Funkin' Kinda Hard On You?』

邦題『ファンクはつらいよ ジョージ・クリントン自伝〜バーバーショップからマザーシップまで旅した男の回顧録』。
押野素子・訳、丸屋九兵衛・監修、DU BOOKSから7月15日発売!