we cant take life for granted
We Can't Take Life For Granted / Eugene Blacknell
 Luv N' Haight '07 

60年代後半から、ベイエリア黒人音楽界では名の通ったギタリスト/ミュージシャンだったというユージン・ブラックネル。多くのシングルを残しながらも、終ぞアルバムをリリースすることは叶わなかった不遇の人。本作は2007年になってラヴン・ヘイトから出た、シングル曲の他、未発表曲やライヴ音源、果てはラジオ・ジングルまでを収めたアルバム。収められている音源は67年から70年代後半までのものと思われるが、聴けば一聴瞭然、タワー・オブ・パワーあたりのバンドが影響を受けているのがよく分かる。ひとりの職人ミュージシャンの半生を通して映し出される、ベイエリア・ファンク裏街道の知られざる歴史。そんな趣きのグレイトな編集盤。
60年代後半の音源は、タフでグリッティでダーティーなファンク/ソウル/ブルースを煮詰めたサウンドで、ゴツゴツしたファンクの原石がギッシリ。イナタいノリの「Cousin John」、強烈なドラム・ブレイクと極太ベースがヤバい「Gettin' Down」はベイエリア・ファンクの先駆け。ブルージーなギター・リフがカッコいいブラス・ファンク「The Trip」も、途中イカツいドラム・ブレイク入り。
70年前後の曲と思われる「Get In A Hurry」「I'm So Thankful」「Dance To The Rhythm」「We Know We Have To Live Together」あたりになってくると、ホーンもギターもパーカッシヴに鳴らされるようになり、ラテンともクロスしたベイエリア特有のファンク・リズムが完成されてくる。これらの曲は本当に素晴らしく、この時期にアルバムがつくられていたら歴史的ファンク名盤になったんじゃないかと妄想させる。
未発表曲の多くは70年代中期~後期のものと思われ、音楽性の幅をより広げていったことが分かる。西海岸の乾いた風に吹かれるグルーヴィー・ソウル「For The Sake Of Love」、タイトなストリート・ファンクの「Jive Kinda Friends」、グルーヴィーなインスト「We Can't Take Life For Granted」あたりは洗練と成熟を感じさせる名演。「Holdin' On」はディスコの影が忍び寄ってきているが、ベイエリアらしいグルーヴはしっかり生かされている。「Wah Wah Funk」はやたらロウな質感のスロー・ファンクで、これは相当カッコいい。「Space Funk」は妖しく蠢くシンセが堪らないミッド・ファンク。ライヴ音源はラフな演奏だが十分楽しめる。