live
Live! / Marvin Gaye
 Tamla '74 

『What's Going On』『Let's Get It On』の大ヒットで絶頂期にあった頃のマーヴィン。
歌手・アーティストとして高い評価を得ながら、セックス・シンボルとしても女性ファンから絶大な人気を誇ったが、マーヴィン自身はナイーヴでデリケートなパーソナリティの持ち主であり、その完璧主義故にライヴで人前で歌うことに恐怖心を抱いていたらしい。そういった繊細で傷つきやすい側面もまた、マーヴィンの大きな魅力のひとつなのだけれど、その時のコンディションによってライヴの出来が大きく左右されることも多かったようだ。
そんなステージ恐怖症のマーヴィンが、絶頂期の最中の74年にリリースしたライヴ盤が本作。MCのイントロダクションの後、「What's Going On」のテーマを奏でるインスト「Overture」から、もの凄い歓声。とにかく、オーディエンスの熱狂ぶりがモノ凄く、特にライヴ序盤、「Trouble Man」のやや自信無さげに歌うマーヴィンのヴォーカルは、ファン達の絶叫に今にも掻き消されそう。ジェイムス・ジェマーソン、デイヴィッド・T・ウォーカー、ジョー・サンプル、エド・グリーンら鉄壁のバンドの繰り出すグルーヴは相当カッコ良く、マーヴィンも、バンドに盛り立てられ徐々に興に乗って力強さを増していく。
「Flyin' High(In The Friendly Sky)/Mercy,Mercy Me(The Ecology)」のメドレーではかなり持ち直し、伸びやかな歌唱が響き渡る。「Inner City Blues」はオリジナルよりもジャズ・ファンク色が強調されたアレンジとバンド・グルーヴ、それを完全に乗りこなすマーヴィンのヴォーカルがカッコ良過ぎ。
本作からシングル・カットされた、切々と懇願するバラード「Distant Lover」で、聴衆の熱狂はピークに達する。会場中の黒人女性をメロメロにしておきながら、次の曲で新恋人ジャニス・ハンターに捧げた新曲「Jan」を披露し、場をややシラケさせるマーヴィン。しかし次の「Keep Gettin' It On」が始まった途端、また耳を劈くような嬌声。
「Fossil Medley」と題された、60年代のモータウン・ヒットを一通り歌った後、ライヴはいよいよ佳境へ。「Let's Get It On」は、オリジナルのポール・ハンフリーの粘り腰のドラムスには敵わないが、ここでのエド・グリーンのプレイも十分にグルーヴィー。そしてオーラスの「What's Going On」は、黄金のデイヴィッド・T節に鳥肌&感涙。あまりに美しい歌と演奏に酔いしれる。聴衆も大いに盛り上がってライヴは幕。やはり本作は、70年代ソウルを代表するライヴ名盤のひとつだ。