madhouse 8
8 / Madhouse
 Paisley Park '87 

80年代のプリンスは、その溢れ出る創作力を自身の作品のみでは処理しきれず、アウトプットの手段として様々なサイド・プロジェクトを立ち上げた。
Pファンクのパーレットやブライズ・オブ・ファンケンシュタインに倣って、あるいはリック・ジェイムスのメリー・ジェーン・ガールズに対抗するように、ヴァニティ6、アポロニア6といった女性グループを手掛ける一方、よりファンクへと重心をシフトしたザ・タイムのようなバンドを実質的に取り仕切ったりした。タイム解散後はザ・ファミリーでファンク路線を継続したが、ザ・ファミリーもアルバム1枚で消滅。
このマッドハウスは、ザ・ファミリー解散後にプリンスが新たに立ち上げたプロジェクトで、87年に2枚のアルバムを残している。メンバーは、ザ・ファミリーからの続投となるサックス奏者、エリック・リーズ以外はよく分からないが、プリンスがメインで制作しているのは間違いないとして、おそらく当時のツアー・メンバーも演奏に加わっているのだと思われる。
当時のプリンスはジャズへの傾倒を深めていたと言われ、『Around The World In A Day』や『Parade』でもその一端が垣間見れるが、この頃からエリック・リーズやアトランタ・ブリスがレコーディングやツアーに加わったことや、シーラEからの影響も大きかったと思われる。その後のアルバム『Sign Of The Times』『Black Album』『Lovesexy』やツアーで大きく貢献したミコ・ウィーヴァー、リーヴァイ・シーサー、ボニー・ボイヤーといったバンド・メンバーも、シーラが連れてきたミュージシャンだった。こういった、ファンクもソウルもそれからジャズも演奏できる腕の立つミュージシャンを得たことが、ジャズを演奏できないロック・バンド、レヴォリューション解散の一因でもあったのだろう。
このマッドハウスの2枚のアルバムは、そんな当時のプリンスの志向が顕れた作品で、一言で言ってしまえば殿下流ジャズ・アルバムだが、2003年の『N.E.W.S.』にも地続きになっているような、簡単にジャズにカテゴライズするのは抵抗のある作品。87年と言えばプリンス全盛期、『Parade』や『Sign Of The Times』にも共通する独特なムードがマッドハウスの2作にも濃厚に充満しており、アルバムのそこかしこにプリンス・サウンドの刻印がベタベタと押されている。
本作『8』は全8曲。収録曲は1曲目から順番に「One」から「Eight」まで数字のみのタイトルが付けられているのも、匿名的なプロジェクトであることを印象付けているし、『N.E.W.S.』の曲タイトルが東西南北であることにも通じているようにも思える。ストレートにジャズを標榜した「One」や、乾いたスネアの鳴りが気持ちいい「Two」、おそらくプリンスによる流麗なピアノが素晴らしい「Four」、重いベースとハンド・クラップが効いたファンキーな「Six」、スリリングなジャズ・ファンク「Seven」など、プリンス・ファンにとっては興味深いアルバムであることは間違いない。