sugar kiss
Sugar Kiss / Sugarfoot
 Warner Bros. '85 

オハイオ・プレイヤーズの中核メンバーで、特にマーキュリー移籍以降はその猥雑でネチッこい黒汁ダダ漏れのヴォーカルとギターでバンドを牽引したリロイ "シュガーフット" ボナー。
70年半ばのオハイオ黄金期には、そのいかにもワルそな面構えと異様にドデカいアフロというインパクト抜群なヴィジュアルもあって、クセ強過ぎなメンバーの中でも一際凄味を効かせていたシュガーフットだが、バンドの勢いもすっかり衰えた84年の『Graduation』ではついにオハイオを脱退してしまう。

シュガーフット唯一のソロ・アルバムとなる本作『Sugar Kiss』は、オハイオ脱退直後に再起をかけてリリースされた作品。ここでシュガーフットを支えるのは、新たなるオハイオ・ファンクの盟主、ロジャー・トラウトマン。ロジャーはアルバムのプロデュースの他、ほとんどの曲の作曲に絡み、演奏はザップのメンバーが総出でバックアップ。

一方で、ジェイムス "ダイアモンド" ウィリアムスやクラレンス "チェット" ウィリスといった、シュガーと同じ釜の飯を食った元プレイヤーズのメンバーも一部の楽曲では助太刀に馳せ参じている。
更に、ダイアモンドとチェットの2人とともにプレイヤーズ脱退後にシャドウとして活動し、シャドウ解散後はプレイヤーズに出戻り『Graduation』を中心になって制作し、またロジャーがプロデュースしたヒューマン・ボディの一員ともなったビリー・ベックのクレジットもあったりする。

内容としては、同時期の『Saga Continues...』『The New Zapp Ⅳ U』との連続性も感じさせる、当時のザップ/ロジャー・サウンドが楽しめる好盤だと思う。
おそらくロジャーには、プレイヤーズ時代にもスウィートなミディアム~スロウ系楽曲で聴かれたシュガーフットのシンガーとしての魅力に、より強くフォーカスしたいという思惑があったのだろう。本作では、「Computer Love」や「I Want To Be Your Man」にも通底するメロウ・マナーを湛えたレパートリーを多く揃えていて、結果としてロジャーの思惑は成就しているように思う。が、欲を言えばやはり荒々しく猥雑な重量級のファンクでイヤラしく唸るシュガーの歌も聴きたかったところではあるけれど。

アルバム・オープナーの「Kiss」はクールかつスムーズにグルーヴするメロウ・ダンサーで、プレイヤーズ時代のシュガーフット像は初っ端から軽く覆されるが、個人的には結構好き。続く「I'm Your Sugar」は、「Computer Love」的なムードに覆われたエレクトロ・メロウ・スロウ。
ザップ・マナー濃厚なミドル・チューン「Call Me」、「You Better Love Somebody」は都会的な雰囲気の哀愁ミディアム・ソウル。

オハイオ・プレイヤーズの代表曲にしてファンク・クラシック「Fire」の再演「Fire "85"」は、ロジャーらしくスタイリッシュにアップデート。ロジャー自身もザップの5thアルバム『Ⅴive』で「Fire」をカバーしているが、やはりオリジネイターであるシュガーフットの歌唱が聴ける本ヴァージョンの方が良い。

「I Choose You」は『Unlimited!』でのソリッドなビート感を先取りしたようなエレクトリック・ファンク。「I Will Be Your Star」はメロウに輝く極上R&Bミドルで、これは堪らない気持ちよさ。
ラストの2曲はダイアモンドとチェットが共作者に名を連ねる曲で、糖蜜のごときスウィート&メロウネスがプレイヤーズ時代の傑作スロウ群を彷彿とさせる「Until The Moment We Met」、「Girl, I Need You」はイカツいエレクトリック・ビートを叩きつけるファンク・ダンサー。